米石油メジャーがアクティビストの要求を聞き、複数の社外取締役を受け入れた。「世紀の大合併」から20年。クリーンエネルギー企業への転換なるか。

 米石油メジャーのエクソンモービルが2021年3月2日に発表した20年12月期の決算は衝撃的な数字となった。

 売上高は前期比31%減の1815億ドル(約19兆7835億円)で、最終損益が224億ドル(約2兆4416億円)の損失を出した。前年同期の143億ドル(約1兆5587億円)の黒字から一転、赤字に陥った。

 通期の最終赤字は「世紀の大合併」と話題となった1999年のエクソンとモービルが合併してから初めて。新型コロナの影響で石油に加えて天然ガスの採算が悪化した。米国とカナダ、アルゼンチンに保有する天然ガス資産の収益見通しが悪化したことで、200億ドル(約2兆1800億円)近い減損損失を計上した。

 ダレン・ウッズCEO(最高経営責任者)は「これまで経験した中で最もチャレンジングな年となった」と振り返り、事態の深刻さを語った。22年までに全従業員の15%に相当する約1万4000人を削減、さらに23年に19年と比べて年間60億ドル(約6540億円)のコスト削減を目指すという。世界的にクリーンエネルギーへの転換が進む中、株式市場では米シェブロンとの経営統合説も浮上するなど先行きへの不安が高まる。

グリーンエコノミーに合わせた事業構造の転換を図れるか、ダレン・ウッズCEOの手腕が問われる
(写真:AP/アフロ)

 ウッズCEOはカーボンニュートラル時代を見据えて、地球温暖化対策の枠組みである「パリ協定を重視し、達成に向けて全面支援する」と語り、経営戦略について「最新技術で会社を変革していく」と強調する。

 自社の気候変動への対応も前面に打ち出している。投資家向け説明会で「16年と比べ温室効果ガス排出量を6%減らしている」と話し、「過去20年で130億ドル(約1兆4170億円)以上をクリーンエネルギーや低炭素技術に投資している」と説明する。

 しかし、ウッズCEOの戦略に投資家は満足しているわけではない。むしろ、外部からの変革を掲げてアクティビスト(行動する株主)が取締役会の人員入れ替えを迫っている。

社外取締役を続々と迎える

 21年2月にはマレーシアの石油会社の前CEOを社外取締役に迎えた。また3月にはアクティビストの要求に応える形で、米国の銀行家と機関投資家の2人も加えている。アクティビストは「株主価値を重視する取締役会にしてほしい」「石油関連の投資を減らしてほしい」と語る。さらに「クリーンエネルギーへの投資を優先させて構造改革を進めるべき」など変化を迫る。

 エクソンはクリーンエネルギー事業部門を立ち上げたり、自社の環境対応を強化したりするなど対応に必死だが、株主の要求は高まるばかり。公的年金の株主も「会社の文化を変えなくてはならない」など脱石油会社へ社風の転換を求めるなど厳しい声は収まりそうもない。

 99年の合併は世界の自動車市場の拡大に伴う「石油の世紀」を象徴するものだった。今は一転、「石油からの脱却」の一手として合併構想がささやかれる。グリーンエコノミーの時代にエクソンが選ぶ進路は、産業転換の象徴となりそうだ。