国際社会は日本の新目標をどのように受け止めるでしょうか。

髙村 主要先進国では、30年に温室効果ガス排出量を半減させるという目標水準が共有されつつあります。なかには英国のように飛びぬけた例(英国は30年までに1990年比で温室効果ガス排出量を78%削減する目標を示した)もありますが。今回、日本は46%削減する目標に加え、50%削減を目指して挑戦することを示しました。この「50%への挑戦」に意欲を示したことで、海外から評価されることはあっても、決して低い評価を受けることはないでしょう。

過去に温室効果ガスの削減目標を決めた時は、産学の代表が出席する国の審議会が、具体的にどのような対策を採用するかや、再エネや原発、火力発電の利用割合を示す「エネルギーミックス」をどうするかを議論した上で、政治家が目標を決めました。今回は、どれだけの削減効果のある対策を積み上げるのか、どのようなエネルギーミックスを実現しようとしているのか、目標達成の裏付けが明確ではありません。過去と目標策定のプロセスが異なり、また透明性に欠けるように見えます。

髙村 そうとも言い切れないのではないでしょうか。菅首相は20年10月、50年の「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)」を目指すと宣言していました。この公知の政策目標に整合的な目標を示したのです。エネルギーミックスを議論する上での大枠、大きな政策目標を提示したのだと見ています。

 50年にカーボンニュートラルを実現するには、30年度にはどの程度の排出量であるべきか、ある程度、幅はあってもおおよそ見当はつきます。エネルギーミックスも30年度のあるべき排出量に整合しておく必要があるでしょう。

 こういった目標は、政治にしか決められないだろうと思います。積み上げでは出てこない数字です。対策の積み上げとエネルギーミックスの策定を先にしていては、50年カーボンニュートラルと整合する目標はなかなか示すことができないでしょう。

 目標の決め方とそのアプローチが変わったことは間違いありません。これまでは対策や電源の導入可能性を積み上げて、目標が決まってきました。それが50年カーボンニュートラルを宣言したことで、目標の決め方が変わったのだと思います。長期ビジョンを明確に示した上で、その方向に我々の社会を導いていくという発想に立っているのでしょう。

 果たしてそれでいいのかと問われれば、確実に30年目標やカーボンニュートラルを実現できる施策を打てるかどうかが鍵なのだと思います。絵に描いた餅で終わるか、背伸びをしなければならないけれどエネルギーシステムや社会の変革を引っ張れるのかどうかが問われるでしょう。