投資家はプライム市場の改革を訴え、東京証券取引所も基準強化を示唆する。経済産業省は、非財務価値を補助金支給の要件にすべく、動き出した。

 東京証券取引所は2022年4月4日、これまでの市場区分を廃止し、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場を発足させた。市場ごとの企業数は、プライム市場が1839社、スタンダード市場が1466社、グロース市場が466社である。

 同日に東証で行われたセレモニーでは、日本取引所グループ、資産運用会社、各市場の代表者が出席し、祝辞を述べた。最初に登壇したのが、日本取引所グループの清田瞭グループCEO(最高経営責任者)である。清田氏は、「上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多数の投資者から高い支持を得られる魅力的な市場を提供する」と再編の狙いを述べた。

東京証券取引所が2022年4月4日に開催した新市場区分移行のセレモニー。写真中央が、日本取引所グループの清田瞭グループCEO(最高経営責任者)<br><span class="fontSizeS">(写真:毎日新聞社/ アフロ)</span>
東京証券取引所が2022年4月4日に開催した新市場区分移行のセレモニー。写真中央が、日本取引所グループの清田瞭グループCEO(最高経営責任者)
(写真:毎日新聞社/ アフロ)

「フォローアップ」の真意

 注目すべきは、新市場の今後について語った清田氏の次の発言だ。

 「投資者の皆様にとって魅力的な市場になっているか、今後、注意深く丹念にフォローアップを行うことで、今般の市場区分見直しの実効性を高め、豊かな社会の実現に貢献していく」

 この発言には、新市場に対する投資家の評価の受け止めと、今後、東証が取るであろう方向性に関するメッセージが隠れている。

 投資家の評価は、次に登壇したアセットマネジメントOneの菅野暁社長の発言に表れている。菅野氏は、「全ての上場会社がそれぞれの上場区分のコンセプトに沿った形で上場しているかという点については一歩前進と前向きに捉えているが、今後さらなる前進が必要と考えている」と話し、踏み込んだ改革の必要性を訴えた。

 念頭にあるのが、上場基準を満たさずに経過措置でプライム市場を選択した企業だ。投資家から、「再編前と変わらない」「骨抜きだ」といった声が上がっている。

 こうした批判に対して清田氏は、「フォローアップ」という言葉に真意を込めた。フォローするのは、プライム基準に達していない企業だ。特に、流通株式時価総額が100億円以上に満たない企業が217社と多い。これらの企業の成長を見ながら、経過措置を外す時期を探ったり、新たな基準を設けたりする――。こうした可能性を示唆した。

 経過措置の期限について東証の山道裕己社長は日経ESGのインタビューで、「東証が勝手に決めるわけではない」と前置きしつつ、「3年」が1つの目安になると語っている。プライム市場の上場要件は、コーポレートガバナンス・コードとも連動している。3年ごとに改訂される次のコーポレートガバナンス・コードで基準が強化されたり、新たな基準が示されたりする可能性がある。上場企業は、時価総額やESG基準などの引き上げに備えるべきだ。