富士フイルム、東京ガス、神奈川県南足柄市が脱炭素で手を組んだ。気候変動による事業への影響を抑えるため、総力戦に打って出る。

 「ものづくりにおけるカーボンニュートラル(脱炭素)モデルを目指す」。2022年3月29日、富士フイルムの後藤禎一社長・CEO(最高経営責任者)は、東京ガスと神奈川県南足柄市との共同記者会見で力を込めた。この日、三者は「脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定」を締結した。第1弾として、製品の生産に必要な燃料の脱炭素化に取り組む。

富士フイルムの後藤禎一社長(中央)。東京ガスや神奈川県南足柄市と連携し、ものづくりでのカーボンニュートラルモデルの確立に挑む
富士フイルムの後藤禎一社長(中央)。東京ガスや神奈川県南足柄市と連携し、ものづくりでのカーボンニュートラルモデルの確立に挑む

メタネーションに活路

 鍵となるのが「メタネーション」だ。CO₂を水素と合成してメタンをつくる技術で、天然ガスの代替となる脱炭素燃料として期待が高まっている。電力の場合、太陽光発電など再生可能エネルギーに切り替えることで脱炭素化できる。だが、化学品などの生産にはガスを燃料とする設備を使うケースが多く、「燃料の脱炭素化は素材産業共通の課題」(後藤社長)になっている。

 そこで、高機能フィルムの主力工場である神奈川事業場足柄サイトにメタネーション設備と水電解装置(水を電気分解して水素を生成する装置)を導入し、生成したメタンをコジェネレーション(熱電併給)設備の燃料として供給する。

 脱炭素燃料の開発に関する東京ガスの技術やノウハウを活用するとともに、南足柄市の協力の下で再エネ電力を調達する。20年代半ばに実証実験を実施し、30年度までに本格稼働を目指す。他の工場への水平展開も視野に入れる。

 富士フイルムグループは21年12月、自社が排出するCO₂を40年度までに実質ゼロにする目標を発表した。30年度にまず19年度比50%減らす。メタネーションを活用したカーボンニュートラルのものづくりを確立し、目標達成に弾みをつける。

 今回の取り組みへの投資額は明らかにしていないが、「事業を継続するための最低条件」(後藤社長)と捉えており、脱炭素に積極的に投資する姿勢を見せる。

 同社はカーボンニュートラル達成に向けて、新たに社内炭素価格(CO₂の排出に価格を付ける制度)も導入した。CO₂の排出削減効果を金額換算し、投資判断の材料にしていることも脱炭素への投資を後押ししている。22年4月から役員報酬にCO₂削減目標の達成度合いを反映するようにし、経営判断に脱炭素の視点を入れる仕掛けも取り入れた。

 気候変動が企業の財務にも影響を及ぼすリスクになった今、全社一丸で取り組むのはもちろん、他社や自治体などを巻き込みながら総力戦で脱炭素に挑む必要がある。