米商務省は中国の太陽光発電装置が関税を回避していないか調査に着手した。事業にブレーキがかかる再エネ事業者は、気候変動政策に逆行すると非難する。

 海外の太陽光発電装置メーカーによる輸入関税の脱税疑惑を巡り、米商務省は2022年3月下旬に調査に乗り出した。太陽光発電のEPC(設計・調達・施工)事業で米最大手のソルブ・エナジーのジョージ・ハーシュマン最高経営責任者(CEO)は、新規プロジェクトにブレーキがかかり、バイデン大統領が推進する気候変動政策を頓挫させる恐れがあると指摘する。「バイデン政権、特に今回の米商務省の判断は、前政権よりも再生可能エネルギー業界に大きなダメージを与えている。現政権は、自分たちがどれだけ再エネを支持しているか連日のように主張しつつ、真逆の意思決定を盛んに行っている」。

 米商務省は22年3月28日、中国の太陽光発電装置メーカーが製造工程の最終段階をカンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムに出荷して行うことで、中国製品を対象とする輸入関税の支払いを回避している疑惑を調査すると明らかにした。アナリストらの推定によると、米国への太陽光発電装置の輸入の約4分の3がこれら4カ国からの輸入品だという。

 今回の調査は米太陽光発電パネルメーカー、オーキシン・ソーラーの要請を受けたもので、中国のサプライヤーが「広範なダンピングの裏工作」を行い、米国メーカーに打撃を与えていると主張していた。

 調査の結果、納税回避に相当すると判断された場合、オバマ政権が中国からの輸入品に賦課した10年来の関税措置がこれら4カ国にも適用され、コストが50〜250%増加する。最終判断は23年初めに下されると見込まれるが、関税は22年4月から遡及的に適用される。太陽光発電所の建設を手掛ける各社は、調査が開始されただけで「市場が冷え込んだ」と漏らす。既に海外メーカーは関税対象となる可能性のある部品の出荷をためらっているという。

気候か産業かで揺れる

 今回のケースは、バイデン政権の優先事項である気候変動政策と国内産業強化の間で高まる緊張を浮き彫りにしている。ホワイトハウスはクリーンエネルギーのインフラ整備を急ぐ一方で、国内製造業と雇用を保護したい考えだ。「いささか機能不全で非論理的だ」とハーシュマン氏は話す。

 洋上風力発電の開発業者からも同様の声が聞こえてくる。米国内のサプライチェーンが十分に発達していない段階で「バイ・アメリカン」を強要すれば、洋上風力発電業界が立ち行かなくなると警鐘を鳴らす。

 大統領選の際、バイデン大統領は野心的な気候変動政策を掲げて選挙キャンペーンを展開した。だが、そうした政策課題を数多く盛り込んだ大型歳出法案は、米上院で可決されなかった。この法案には、再エネ開発業者やメーカーに対する前例のない税制優遇措置が含まれていた。

 「法案が通れば、間違いなく米国の製造業を再建させられる。だが、主要な生産能力を市場から排除するつもりはない」とハーシュマン氏は話す。「目先は現状のグローバルなサプライチェーンを活用し、将来的に米国内のサプライチェーンに移行する必要がある」。

 一方、オーキシンは米国内での部品供給体制の強化は可能だと主張する。マムン・ラシッドCEOは、「国内供給量が不十分だと言う企業は、国内メーカーからの購入を試みてさえいない。我々は十分な発注があれば、すぐに生産量を拡大できる。それには、従業員に適正な賃金を支払えるだけの公正な価格で購入してもらう必要がある」と訴える。

Myles McCormick(c)The Financial Times Ltd.2022 Apr.3