ESGと企業価値の関連性を分析し、株価向上の流れを調べた。取り組みの優先順位を明らかにして、成長を加速させる。

 日清食品ホールディングス(HD)は2022年2月2日、ESGの取り組みと企業価値の関係を統合報告書で公表した。ESGは今や企業価値に欠かせない要素である。

 同社が調べたのは、ESGの取り組みが何年後に企業価値に反映されているかだ。「社会課題に貢献する商品数」「CO₂排出量」など274項目のESGデータを複数年分用意。回帰分析と呼ばれる統計的手法を用いて、ESGデータと株価純資産倍率(PBR)の関連性を調べた。分析モデルは早稲田大学大学院客員教授の柳良平氏が提唱する「柳モデル」を使い、データ分析はアビームコンサルティングが担当した。

CO₂1%減でPBR1%増

 ESGデータ274項目中、79項目で望ましい関連性が認められた。具体的には、「社会課題に貢献する商品数を1%増やすとその年にPBRが1%向上する」「CO₂排出量を1%削減すると8年後にPBRが1%向上する」といった結果が得られた(下の図)。

■ PBRが何年後に向上するか
■ PBRが何年後に向上するか
ESGの取り組みと企業価値(PBR、株価純資産倍率)の関連性を調べた。上は、関連性が見られた取り組み例
(出所:日清食品ホールディングス)
横山 之雄 氏
横山 之雄 氏
日清食品ホールディングス
取締役・CSO(グループ戦略責任者)兼常務執行役員(写真:中島 正之)

 分析の狙いについて取締役・CSO(グループ戦略責任者)の横山之雄氏は、「企業価値に直結する取り組みは何か。効果は出ているか。企業理念に沿っているか。これらを定量的に調べることで、投資の優先順位を判断できる」と話す。

 CO₂排出量や水使用量の削減は、それぞれ8年後と10年後に効果が表れており、息の長い投資が必要となる。一方、社会課題に貢献する商品数の増加は、実施したその年にPBRが向上して即効性がある。こうした特徴を踏まえながら、効果の大きさを考慮し、注力すべき取り組みに投資を振り向ける。

 同社は経営指標として、EPSとPERの拡大を掲げている。EPSは1株当たり当期純利益、PERは株価収益率である。そこで、ESGの取り組み同士がどのようにこの2つに結び付いているかも調べた。

 EPSとPERとの関連性が認められた50項目のESGデータを抜粋し、それらESGデータ同士の関連性も調べた。関連性が認められた項目をつなげるとEPSとPERの向上につながるストーリーが浮かび上がる。