脱炭素に移行する企業を資金面で支援するトランジションファイナンス。日本初となる事例も登場し、政府が国内での活用を促進する。

 川崎汽船は2021年3月、日本初のトランジションローンを使って、みずほ銀行と三井住友信託銀行から約59億円を調達した。LNG(液化天然ガス)を燃料とする自動車運搬の専用船の調達資金に充てる。

■ 気候トランジション戦略としてLNG船を活用する
トランジションローンを活用したLNGを燃料とする自動車専用の運搬船
(写真:川崎汽船)

 脱炭素社会に向けて社会や経済が変化することを「トランジション(移行)」と呼ぶ。再生可能エネルギーの活用などに対する投融資が拡大している。一方で、今は化石資源を使わざるを得ない企業に投融資して、脱炭素への移行を支援するトランジションファイナンスが注目を集めている。

● 2030年までのCO2削減策
出所:川崎汽船

 今回の船舶では従来の燃料である重油に代わってLNGを使うため、船舶運航のCO2排出を25〜30%程度、削減できると見込まれる。第三者機関の日本格付研究所(JCR)は、世界の証券会社などが参加する国際資本市場協会(ICMA)が20年12月に発表したトランジションファイナンスの指針に適格であると評価した。

 ICMAの指針「気候トランジションファイナンス・ハンドブック」によれば、企業が脱炭素にどう取り組むかを「気候トランジション戦略」として示すことが必要だ。パリ協定に貢献する2030年や50年のCO2削減目標や、革新技術の開発・導入などの投資計画の策定が求められる。投資計画に組み込まれた設備投資や開発費用に資金を充てる場合、トランジションローンに適格であると認められる。JCRは「LNG船は川崎汽船の30年目標を達成するのに重要な投資計画の1つ。資金使途として適切だと評価した」と説明する。

政府が「利子補給」で後押し

 ICMAの指針が発表される以前から、英国のガス会社がトランジションボンド(債券)を起債するなど海外事例は既に十数件ある。日本でもトランジションファイナンスの活用が進むように、政府が支援する。

 金融機関が、投融資先の活動が該当するかどうかを判断しやすくするため、経済産業省や環境省、金融庁は「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」を21年5月までに示す見通しだ。また、トランジションのための資金調達を検討する企業を募り、モデル事業を実施する。金融機関に対する利子補給制度を創設し、野心的な削減に取り組む事例に0.1%の利下げをする方針も示している。

 化石資源を当面は使わざるを得ない海運やエネルギー会社、素材メーカーなどが、脱炭素への移行期で国際競争力を保つには、革新技術や設備に対する多額の投資が要る。これを投融資で支えるトランジションファイナンスが今後、活発化しそうだ。