日本や海外の論客が、SDGsの推進について力強いメッセージを発した。脱炭素では建築業界が担う責任の大きさが指摘された。

 2022年5月9日からの6日間、東京の大手町・丸の内・有楽町を舞台に、「日経SDGsフェス in 大丸有」が開催された。国内外から産官学の代表が集い、世界のSDGs推進の課題と歩むべき方向性を語った。

 米国の論客が、50年までの脱炭素に向けて力強いメッセージを発した。1日目には、米コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が登壇。「エネルギーシステムの脱炭素化するため、風力や太陽光、水力、原子力など(CO₂を排出しない)ゼロエミッション電源の利用に取り組むべきだ」と話した。

 また、「まずは電力網や自動車、建築、鉄鋼、化学、セメントなどの産業で30年までの(温室効果ガス削減の)計画を国・地域ごとに策定する必要がある」と指摘。サックス教授は、日本で30年までの計画を基に排出削減が進んでいるように、他の国でも同様に推進する重要性を訴えた。

米建築、排出量65%減に挑む

 5月12日には建築家のエドワード・マズリア氏が登壇し、「世界のCO₂排出量の半分は建築業界から。建築家や建設会社はこの排出に責任を負っている」と指摘した。

 国際エネルギー機関(IEA)によれば21年、世界のCO₂排出量の約27%が建築物の使用による排出、約43%が製造業などの産業からだった。産業からの排出の約半分は、建築の資材や躯体、インフラなどに関わる製造業という。つまり建築物の使用と、資材などの製造で世界のCO₂の半分を排出している。

 脱炭素の実現には、建築を巡るCO₂排出量もゼロに近づける必要がある。マズリア氏は、(1)全ての新しい建築を排出ゼロにする、(2)既存建築物も排出をゼロにする、(3)鉄鋼やセメントなど資材を作る時の排出をゼロにする─と3つの方法を示し、「実現は簡単だ。省エネし、電化を進め、再エネ電力を使うことだ」と強調した。

■ 建築物のCO₂削減へ3つの方法を強調した
■ 建築物のCO₂削減へ3つの方法を強調した
米国建築家協会フェローで、NGO「アーキテクチュア2030」の最高経営責任者(CEO)を務めるエドワード・マズリア氏(上写真)は、建築部門の脱炭素化を実現するための、3つの方法を示した(下左写真、下右の図)<br><span class="fontSizeS">(出所:エドワード・マズリア氏の講演)</span>
米国建築家協会フェローで、NGO「アーキテクチュア2030」の最高経営責任者(CEO)を務めるエドワード・マズリア氏(上写真)は、建築部門の脱炭素化を実現するための、3つの方法を示した(下左写真、下右の図)<br><span class="fontSizeS">(出所:エドワード・マズリア氏の講演)</span>
米国建築家協会フェローで、NGO「アーキテクチュア2030」の最高経営責任者(CEO)を務めるエドワード・マズリア氏(上写真)は、建築部門の脱炭素化を実現するための、3つの方法を示した(下左写真、下右の図)
(出所:エドワード・マズリア氏の講演)

 マズリア氏は「アーキテクチュア2030」という自ら立ち上げたNGOを通じて、米国の建築業界を中心にCO₂ゼロ建築を訴える。21年には、マズリア氏の働きかけに応じた米国建築家協会会長が、建築設計事務所や建設会社などが30年に排出量を65%削減する宣言に署名した。

 日本の建築業界はどう答えるか。まずは30年までの計画や行動が脱炭素と合致するかが問われるだろう。