持続可能な食料システムの構築を目指す2050年の国の戦略が発表された。脱炭素と生物多様性保全に関わる食のテーマは21年の国連総会の目玉だ。
2021年9月の国連総会で、世界の首脳が食の持続可能性について話し合う「国連食料システムサミット」が開かれる。その場で日本政府はカーボンニュートラルと生物多様性保全の両方に貢献する新戦略をお披露目する。その「みどりの食料システム戦略」を農林水産省が年5月に発表した。イノベーションを活用し、食のサプライチェーンにおける持続可能性と生産性を高めるという内容だ。
世界人口は50年に97億人に達すると予想され、食料危機が心配されている。それに伴って問題視されているのが食の持続可能性だ。世界の温室効果ガス排出量490億tのうち、農林業とその他の土地利用による排出は25%を占めると見積もられている。生物多様性への影響も見逃せない。国連の報告書は、生物多様性劣化の原因の1つに、農林水産業による土地利用を挙げている。
日本では農林業とその他の土地利用に伴って排出されるCO2は全体の4%にすぎないが、食料自給率が37%と低いことを考えると、食品の輸入を通して海外のCO2排出や生物多様性の損失に加担しているといえる。生産者の高齢化や後継者不足も深刻だ。自営農を主業にする人数は20年に136万人と25年間で半減した。

官邸から策定の指示
しかし、これまでは農林水産行政と気候変動や生物多様性の対策が縦割りであることから、横串を通した解決が進まなかった。そこにハッパをかけたのが菅義偉首相のカーボンニュートラル宣言だ。20年末にグリーン成長戦略が発表され、官邸からも食の戦略をつくる指示が下った。