ESG経営を推進する企業にとって社員一人ひとりの理解が欠かせない。小林製薬が2020年から始めたワークショップが成果を出しつつある。

 「SDGsのような活動はどこか1つの基幹部署が先行して行い、周囲はおいてきぼりになりがちだが、今回のような自分事化して考える機会をもらえることで、より興味を持って情報を取りに行く意識ができた」

 小林製薬が毎月開催しているワークショップ「サステナビリティMeetUp!」に参加した社員からはこんな声が上がる。2020年8月に始めてから21年4月までに延べ1154人が参加した。ワークショップの狙いは、約3500人いる社員がESGを自分事として捉え、日々の業務に落とし込んで取り組めるようにすることだ。

「サステナビリティMeetUp!」に参加した社員(左)。新型コロナウイルス感染防止のため、オンラインで開催している。参加者に配布しているシート(右)。SDGsの目標について理解できたものにシールを貼っていく
(写真:小林製薬)

 同社はESGを経営の柱に据え、経営トップが社内に積極的に発信している。ただ、社員にアンケートした結果、ESGの方針について理解している人は約8割いたのに対して、意欲的に取り組めている人は5割に満たなかった。

ESGの提案が増加

 ワークショップは、同社に関連する社会課題について理解を深めた後、グループに分かれて議論する。地球温暖化やダイバーシティ、循環型社会など、SDGs(持続可能な開発目標)とも関わりが深いテーマを幅広く取り上げる。

 普段、顔を会わせる機会のない他部署の人と交流できることも、参加の大きな動機になっているという。小林製薬グループ統括本社経営企画部サステナビリティ戦略推進グループの関雄氏は、「営業担当者と研究員が議論するなど、社内コミュニケーションの活性化に一役買っている。将来的にはイノベーションの創出につなげていけたらいい」と期待する。

 ワークショップを始めてから、ESGに関する提案が多く寄せられるようになった。21年1月時点で100件以上の提案があった。提案の中から生まれたのが、店頭販促物の素材変更である。プラスチックごみの削減に向けて、今春から芳香・消臭剤の香りを店頭で実際に確かめる「香りサンプル」の素材を、プラスチックから紙主体のものに切り替えた。

 ESGを社員にどう理解・浸透させるか、企業は知恵を絞る必要がある。