サプライチェーンの人権対応を管理するツールの活用が進んでいる。数万社の情報を管理し、優れたサプライヤーを選別する企業が増えてきた。

 途上国での人権侵害や、ロシアや中国を巡る地政学リスクにまつわる人権問題が顕在化している今、サプライチェーンの人権対応が企業の重要な経営課題になってきた。

 世界に広がるサプライチェーンの人権を管理するため、活用が進んでいるのが「Sedex」(英NGOセデックスが運営)や「EcoVadis」(仏エコバディスが運営)という情報共有プラットフォームだ。環境や人権に関する質問にサプライヤーが回答すると、回答や評価を複数のバイヤー(買い手)企業が確認できる。バイヤーは情報を一括管理でき、サプライヤーはバイヤーごとに質問に回答する必要がない点がメリットだ。

 Sedexを活用しているのは英ユニリーバなど主に日用品の企業。バイヤーとサプライヤーを合わせた数は約5年で1.5倍に増え、現在6万社以上が活用している。

 花王はグローバルの取引金額83%に当たるサプライヤーにSedexか花王独自の質問票への回答を要請している。アサヒグループホールディングスは2020年にSedexに加入してサプライヤーに回答を依頼し、数百社が加入した。キリンホールディングスも加入。21年、「持続可能なサプライヤー規範」を定め、規範に重大な違反があれば取引を停止するとしてサプライヤー500社への説明会で規範に同意する承諾書の提出を求めた。22年に入りSedexへの回答も要請した。

グリーンウオッシュを見抜く

 EcoVadisと契約しているバイヤー企業は米デュポンや仏ミシュランなど760社。ブリヂストンや武田薬品工業など約30社の日本企業も活用する。サプライヤーは約9万社に上り、うち3500社が日本企業だ。

 サプライヤーの回答は100点で採点し、国際機関やNGOなど3000以上の情報源の意見も反映して虚偽の回答やグリーンウオッシュを見逃さないようにしている。総合点の上位1%の企業に「プラチナ」などメダルを授与するため、サプライヤーは他のバイヤーに活動を訴求できる。

 塩野義製薬は20年からEcoVadisを活用し、1次・2次サプライヤー590社のうち優先度の高い企業に回答を依頼している。一方、同社も海外の製薬会社に原薬を納入するため約10社から回答を求められている。

■ サプライヤーを管理する人権評価の共同プラットフォーム
■ サプライヤーを管理する人権評価の共同プラットフォーム
出所:各プラットフォームの資料を基に日経ESG作成

 バイヤー企業はネットワーク上の情報から優れたサプライヤーを選別できる。サプライヤーは世界標準が求める人権対策レベルを知り、改善に生かせる。ネットワークから学び使いこなす、攻めの姿勢が必要だ。