金融庁の調査結果が、資産運用業界で波紋を広げている。増えるESG投信に「見せかけ」はないのか。監視を強化する。

 金融庁が、国内で販売するESG投資信託(投信)に警鐘を鳴らしている。商品名に「ESG」をうたいながら、その実態が伴わない「ESGウオッシュ」を疑問視している。

 金融庁の危惧は、同庁が2022年4月25日に開催したサステナブルファイナンス有識者会議で示された。「ESG関連公募投資信託を巡る状況」と題した資料で、国内でESG投信を販売する37社・225商品を調査した結果を示した。

 金融庁は毎年、資産運用の現状や課題をまとめた「資産運用業高度化プログレスレポート」を公表しており、22年は早ければ5月末にも公表する見込みである。プログレスレポートは国内投資信託の動向を示すものだが、金融庁が資産運用会社に対して課題を投げかけるものでもあり、国内の資産運用会社が注目する。金融庁担当者は、「この調査結果はプログレスレポートのいわば“速報版”だ。22年のプログレスレポートは、ESGに関する内容が大きく増える」と話す。

 金融庁は、ESG投信に関してどのような課題があると感じているのか。有識者会議で示された調査結果を見てみよう。

ESG判断する「目」あるか

 ESG関連投信の新規設定は、20年の41本から21年は96本と倍以上に増えた。21年10月時点で、37社が225商品を扱っている。

 ESG投信を扱う資産運用会社にESG専門部署の有無を聞いたところ、約3割の11社がESG専門部署を設けていなかった。ESG専門人材の有無に関しては、「0人」と答えた運用会社が38%と最も多かった。

 ESG投信は、構成銘柄を選別する際、企業のESGを調査・分析する必要がある。環境、社会、ガバナンスともに専門性が高く、それぞれどういった取り組みが企業価値に結びつくかという判断は、ESGに精通した人材の知識が必要となる。こうした専門人材なしにESG投信を販売・運用しているとしたら、「ESGウオッシュ」の懸念がある。

 なぜ、専門人材なしにESG投信が運用できるのか。金融庁は、この要因として考えられる調査結果も示している。外部委託の状況だ。

 調査対象としたESG投信のうち、63%が運用を外部委託していた。一部を外部委託している4%と合わせると、約7割が運用を外部委託していることになる。一部の資産運用会社からは、外部委託先のESG投資戦略やエンゲージメントの実施状況について、「具体的には把握していない」「適宜実行されている」という回答があったとして、外部委託先の運用状況を十分に把握していないと思われる実態を指摘している。

■ ESG投資信託の運用状況
■ ESG投資信託の運用状況
注:ESG専門人材は、90%以上の時間をESG関連業務に費やす専任スタッフと定義

金融庁が2021年10月末時点のESG投資信託37社・225本を調査した結果
(出所:金融庁)