太陽光発電所の建設による自然破壊が問題になっている。再生可能エネルギーと生態系の回復をセットにしたサービスが登場した。

 再生可能エネルギー事業を手掛けるETSホールディングスと、京都大学発ベンチャーのサンリット・シードリングス(以下、サンリット)は共同で、太陽光発電所の「生態系リデザイン」サービスを開始する。発電所設備の撤去後に自然生態系が回復しやすい土地改良サービスを付加価値として提供、受注拡大につなげたい考えだ。

 新サービスの主なターゲットとして、荒廃した森林を抱える自治体を挙げる。2019年4月に「森林経営管理制度」が施行され、適切な管理が行われず災害を引き起こす可能性のある森林について、自治体が森林所有者からの委託を受けて管理することになった。

 しかし現状では、「荒廃した森林をどう管理していいか困惑している自治体は多い。生態系に配慮した太陽光発電所に転用することで、運用中は売電収入が得られ、設備撤去後は豊かな生態系を回復できる開発事業として提案していく」と、ETS ホールディングス社長の加藤慎章氏は話す。

ETSホールディングスが施工した「SK白河太陽光発電所」(福島県白河市、30MW。既に竣工しており、新サービスの対象ではない)<br><span class="fontSizeS">(写真:ETSホールディングス)</span>
ETSホールディングスが施工した「SK白河太陽光発電所」(福島県白河市、30MW。既に竣工しており、新サービスの対象ではない)
(写真:ETSホールディングス)

「生態系回復」を付加価値に

 最近、全国各地で豪雨などによる太陽光発電設備の倒壊事故が頻発している。「原因は、地形や地質、生態系の特性に合わない開発を進めるから。こうした状況を何とかしたいと思っていたところ、サンリット・シードリングスの生態系リデザインを知った」と加藤氏は新サービスを開発した背景を語る。

 生態系リデザインとは、その土地に合った自然生態系を科学的に解明し、土壌改良や植栽を行うことによって、持続可能な土地利用を可能にする手法。ベースにあるのは、京都大学生態学研究センター准教授でサンリット創業者の東樹宏和氏による「植物と真菌の共生ネットワーク」理論だ。土壌サンプルなどから、その土地の植物と真菌の共生関係をDNA分析によって解明し、最適な菌や肥料、植栽を施すことで生態系を再構築する。

■ 植物と真菌の共生関係のイメージ
■ 植物と真菌の共生関係のイメージ
出所:サンリット・シードリングス

 「植林で人工的に作られた森林などは、その土地に合った生態系になっているとは必ずしも言えない」と、サンリットCEOの小野曜氏は話す。同社は豊富な菌資源を保有しており、既に様々な目的の「生態系リデザイン」に取り組んでいる。農作物の病害抑制や生長の促進、有機物の発酵、抗菌物質の生産などだ。現在は18年9月の地震で大きな被害を受けた北海道厚真町の土地改良などに注力している。

 小野氏は太陽光発電所の新サービスに大きな可能性を感じているという。「例えば、荒廃した農地を太陽光発電所に転用するとともに、パネルの下の日照が少ない場所でも育つ農作物を育て、売電以外にも収益を上げるといった提案ができる。また土壌がむき出しになった放置林を転用する際には、その土地に適した植物で地表を覆うことで降雨時の土砂災害を防ぐといった提案も可能だ」(小野氏)。

 新サービスは、自治体だけでなく、太陽光発電施設を持つ、環境意識の高い事業者などにも提案していく。「パートナー企業を募り、生態系に配慮した太陽光発電所を広めていきたい」と加藤氏は意欲を見せる。21年中にまずは1件の受注を目指す。サービス料は初期コストには含めず、ランニングコストの一部として回収する考えという。