米国政府は外部機関のモデル分析結果を参照したとしているが、21年2月から3月にかけて、様々な機関が30年に50%程度の削減が可能という分析を発表していた。電力は80%前後の削減で各機関の分析結果がそろっていたが、他部門については「運輸部門で約20%減、森林吸収が約55%増」とするものもあれば、「運輸部門で約40%減、森林吸収が約23%増」とするものもあるなど、数字がそろっていなかった。

 米国政府の文書にも「目標達成には様々な道筋がある」と書かれており、電力以外の部門については、1つの削減率のパターンに、決め打ちしていないものと思われる。

 しかし、どのパターンでも、30年までの間に大きな変化が必要となる。電力以外の部門は基準年となる05年以降、排出量の漸増や漸減はあったが、大きな傾向としては横ばいで推移しており(下の図)、これを30年に向けて、減少トレンドに乗せ、吸収量も増やさなければならない。

■ 電力以外の排出は横ばいになっている
米国の部門別排出量(2005~19年)。電力からの温室効果ガス排出量は漸減しているが、運輸や産業など他部門の排出は横ばい傾向にある
(出所:電力中央研究所)

 例えば、運輸部門は05年以降、19年まで排出は横ばい傾向であったが、諸機関の分析では、30年に20〜40%減となっている。数字の幅は大きいが、20%減であったとしても過去にない大きな変化、例えば電気自動車(EV)の加速的な導入が必要となり、40%減とした分析では乗用車の新車販売に占めるEV比率が30年に40%となっていた。

バイデン大統領に最初の試練

 他方、諸機関の分析で削減率が比較的狭い幅に収まったのが産業部門である。同部門では鉄鋼、セメント、化学などの素材産業の排出割合が多いが、こうした業種の脱炭素化にはCO2回収・利用・貯留(CCUS)や水素といった研究開発・実証段階にあって、すぐには大規模導入できない技術が必要となる。そのため削減率は10〜15%減と小幅になっているが、この数字を達成するのにも省エネや電化を最大限追求しつつ、若干のCCUS導入が必要と見込まれる。

 こうした削減の実現には新たな政策の導入が不可欠である。今後、バイデン政権は、議会を通じた立法によって、35年の電力ゼロ排出を義務化する「クリーン電力基準」の導入や各部門での脱炭素投資の促進を図り、既存法の下での行政権限によって、自動車、建物、メタン漏洩などへの規制を強化することになる。

 50〜52%削減はこれらの対策が同時にうまくいく場合にのみ実現できる数字であり、この時点で実現不可能とまでは言えないが、達成のハードルは非常に高い。特に、対策の中心となるクリーン電力基準を含む法案を議会が可決できるか際どい状況にある。ぎりぎりの議席数で過半数を維持している民主党の中に、慎重な立場の議員が複数いるためだ。

 30年目標の達成に向けて党内をまとめることができるか、バイデン大統領の手腕が問われる。