多様なステークホルダーの視点を長期戦略に生かす。前社長の西井孝明氏による企業改革の総仕上げとなる。

 味の素が2021年4月に立ち上げた「サステナビリティ諮問会議」が、1つの結論を出そうとしている。これまでの議論を経て、22年10月に最終答申を出す予定である。

 この会議は、50年を見据えた経営の重要課題(マテリアリティ)を示すことを目指している。特徴は、経営、アカデミア(学術界)、新興国視点、ミレニアル・Z世代視点、ESG・インパクト投資家など、ステークホルダーを代表するメンバーをそろえたところだ。取締役会や執行側の考えも確認しながら議論している。

 会議の立案者は、取締役 執行役で前社長の西井孝明氏である。西井氏は、15年の社長就任からサステナビリティを経営の中核に位置付け、様々な企業改革を実践してきた。

「改革社長」が残すもの

 例えば、ROIC(投下資本利益率)経営の導入による事業ポートフォリオ改革。今ある事業に固執して、社会価値を生まない事業を抱え続けてはいないか――。西井氏自ら現場に出向いて社員との対話を繰り返し、意識改革に取り組んだ。

 経営指標の1つに、従業員の士気である「従業員エンゲージメント」を導入し、経営に「ウェルビーイング」の概念をいち早く採り入れた。同社は、社会課題の解決によって経済価値を創出する「ASV(AjinomotoGroup Shared Value)」を経営の中心に位置付けている。従業員の士気をスコア化し、経営につなげる試みだ。

 ガバナンス改革も断行した。21年、指名委員会等設置会社に移行。執行と監督を分離し、社内取締役が多数を占めていた取締役会を、社外取締役が過半数になるようにした。前述の従業員エンゲージメントの達成度は、役員報酬と連動させた。

 味の素は、前中期経営計画で「グローバル食品企業トップ10クラス入り」を目指すと宣言した。しかし、世界の競合の背中は遠い。味の素の時価総額が約1.7兆円なのに対し、スイスのネスレは約45兆円、英ユニリーバは約15兆円、米モンデリーズ・インターナショナルは約12兆円と開きがある。こうした世界の競合に追いつけるか。サステナビリティを軸とした長期戦略が鍵を握る。

 西井氏は、7年間務めた社長の座を22年4月に藤江太郎氏に譲り、6月には取締役からも退く。この会議は西井氏の最後の置き土産だ。同社が22年4月19日に開催したサステナビリティ諮問会議の後に、西井氏と議長のデイヴィス・スコット氏に話を聞いた。

味の素が2022年4月19日に開催したサステナビリティ諮問会議の様子。多様なステークホルダーを代表するメンバーで長期戦略を議論(写真左)。議長を務めるデイヴィス・スコット氏(写真右の右)<br><span class="fontSizeS">(写真:味の素)</span>
味の素が2022年4月19日に開催したサステナビリティ諮問会議の様子。多様なステークホルダーを代表するメンバーで長期戦略を議論(写真左)。議長を務めるデイヴィス・スコット氏(写真右の右)<br><span class="fontSizeS">(写真:味の素)</span>
味の素が2022年4月19日に開催したサステナビリティ諮問会議の様子。多様なステークホルダーを代表するメンバーで長期戦略を議論(写真左)。議長を務めるデイヴィス・スコット氏(写真右の右)
(写真:味の素)