政府は人的資本可視化の指針を2022年7月下旬から8月上旬に公表する。企業は経営戦略に合わせて開示項目を選び、価値向上に資することが求められる。

 内閣官房は2022年6月20日、「人的資本」可視化の指針案を公開した。人的資本とは、従業員などの人材を企業価値を生む投資対象と捉え、人事制度や施策を講ずる考え方だ。草案への意見募集を経て7月下旬から8月上旬を目途に指針を公表する。

 人的資本を含む非財務情報の開示に投資家の関心が高まる中、開示項目や方法については様々な基準や指針が乱立する。グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)、国際標準化機構(ISO)、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)、米証券取引委員会(SEC)、世界経済フォーラム(WEF)などだ。

 政府の指針案はこれらを整理し、人的資本に関して日本企業として開示が望ましい項目案を具体的に示した(下表)。さらに各項目の一部について、開示項目の具体例を挙げた(下表、「育成」と「ダイバーシティ」の例)。これは、前述の基準や指針に掲載された項目を網羅的に集めたものだ。表に示したのは開示項目の例であり、企業は必ずしも全てを開示する必要はない。

■ 人的資本に関して開示が望ましい項目案と開示情報の具体例
■ 人的資本に関して開示が望ましい項目案と開示情報の具体例
出所:内閣官房「人的資本可視化指針(案)」を基に日経ESGが作成

経営戦略と連携して情報を開示

 人的資本の情報開示に関して、企業が押さえるべき要所は2つある。

 まず開示が必須の項目については、社内データの準備が必要だ。例えば「ダイバーシティ」内の男女間の給与格差、女性管理職比率、男性の育児休業取得率は、23年以降に有価証券報告書への記載が義務付けられる。これらは数値化が可能な項目で、投資家が企業を比較分析する際に見る、いわば「規定演技」である。

 一方で「育成」の研修やスキル向上プログラムなどは、開示が必須ではない「自由演技」だ。業態や戦略に合わせてこれらを選択し開示することで自社の強みや独自性を打ち出すことができる。これらは統合報告書などを通じて開示することになろう。

 2つ目の要所は、開示に先立ち企業の経営戦略を明示するのが大事である点だ。自社の理念やパーパス(存在意義)、持続的成長と価値向上のための戦略(価値創造ストーリー)、重要課題を明確にし、それらに連携した具体的施策の開示が求められる。

 開示項目の選定や方法で、企業の成長性や市場価値が問われる。