戸田建設など6社が長崎県五島市沖の洋上風力発電事業に取り組む。量産化の技術を磨いて低コスト化を進め、浮体式を全国に広げたい考えだ。

 再エネ海域利用法に基づく第1号案件の事業者が2021年6月11日に決定した。同法は洋上風力発電の大量導入を目的に、19年4月に施行された。第1号案件「長崎県五島市沖」の開発を担うのは「ごとう市沖洋上風力発電合同会社(仮称)」。戸田建設を筆頭に、ENEOS、大阪ガス、関西電力、INPEX、中部電力の6社で構成するコンソーシアムだ。

 「浮体式洋上風力の将来性を見込み、エネルギー転換に本気で取り組む企業が結集した。2MWの風車を8基建設して発電事業を行い、その後も日本全国さらに海外で事業を展開する」と、戸田建設浮体式洋上風力発電事業部長の佐藤郁氏は語る。

 戸田建設は07年に浮体式洋上風力発電の研究に着手、10年に環境省の実証事業を受託した。13年には2MWの実証機「はえんかぜ」を五島市椛島沖に設置。2年間の実証運転を経て機体を同市崎山沖に移し、16年3月から商用運転を開始した。

 実証運転から8年、「はえんかぜ」は度重なる台風の襲来を受けながら事故もなく安定して発電を続けている。こうした実績が事業者選定の決め手になった。「事業計画の実現性を検証する第三者委員会では、これまでの稼働実績と、五島市との良好な地域共生に対する評価が高かった」と、資源エネルギー庁の清水淳太郎・新エネルギー課長は語る。

■長崎県五島市沖に16MWの洋上風力発電施設を建設
長崎県五島市沖の開発区域は、福江島の東岸沖の約2700haのエリア(左の図の赤い破線で囲んだエリア)。そこからほど近い海域には、2016年に商用運転を開始した浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」が現在も稼働している。海中の浮体部分には多くの魚が集まり魚礁のようになっている(右)
(地図の出所:環境省 環境アセスメントデータベース(EADAS)、写真:戸田建設)

日本の海域には浮体式が有利

 戸田建設は今回の選定を機に、浮体式洋上風力の量産化を加速させる構えだ。「浮体式洋上風力のポテンシャルは着床式よりはるかに大きい。50年カーボンニュートラルの達成には浮体式の活用が必須だ」と佐藤氏は明言する。

 電力中央研究所の試算によれば、再エネ海域利用法の対象海域には、着床式で134.2GW、浮体式で187.8GWの設備容量ポテンシャルがある。ただし着床式は、漁業権の設定海域が64%を占め、利用可能な区域はかなり限られるとみられる。

 さらに、欧州で急速に普及した着床式が日本で導入が進まない理由は「地震、水深、海底地盤などの条件が欧州と大きく異なるから」と佐藤氏は指摘する。

 地震の多発地帯で、海底の地形が複雑な日本では、着床式の機体は設置場所ごとに個別の設計が必要となり、欧州のような大量生産が難しい。一方、浮体式はケーブルを使って係留するため、地震や地形の影響を受けにくく、量産化に向いている。

1kWh当たり9円に挑戦

 ただし浮体式は、建設コストが高いという課題がある。機体の海上輸送や洋上施工には、自動船位保持装置(DPS)を搭載した大型の起重機船が必要になるからだ。実際、戸田建設が行った実証事業では目標を大きく超過するコストが発生した。