高い収益力とESG経営を両立するデンマークの製薬大手ノボ ノルディスク。EUタクソノミーに基づく開示の準備を急ピッチで進める。

 デンマークの製薬大手ノボ ノルディスクは2022年5月、サプライチェーンの環境負荷をゼロにする経営を加速させると日経ESGに語った。同社の21年の売上高は1408億デンマーク・クローネ(2兆7000億円)、営業利益は586億クローネ(1兆1200億円)といずれも前年比10%以上の伸び。自己資本利益率(ROE)は82.9%と高い。好調の理由は、糖尿病治療薬の利用者の増加や、安定した株主が同社のESG経営や長期的な研究開発投資を支持していることだ。高収益を背景に環境対策に力を入れる。

 同社は製薬会社として世界で初めて20年に全生産拠点の電力を100%再生可能エネルギーに切り替えた。同時に取り組んできたのが、サプライヤーのCO₂排出量を実質ゼロにすること。同社は「環境負荷ゼロ」を目指す戦略「サーキュラー・フォー・ゼロ」を打ち出した。45年までにサプライチェーンCO₂排出量を実質ゼロにし、30年までに自社製品の50%を再利用することを柱とする。

 そこで19年以降、サプライヤーに再エネへの転換を依頼。6万社のサプライヤーのうち排出量が大きい約300社と協力して地域の事情に応じた再エネ転換計画を立てた。その際、ノボの再エネ転換の事例も共有した。欧州や中国で風力、米国で太陽光、ブラジルで水力に転換し、日本ではグリーン電力証書を活用している。営業車8000台を全て電気自動車に切り替えた。こうした取り組みにより既にCO₂を25%削減した。

福島県のノボ ノルディスク ファーマ郡山工場ではグリーン電力証書とグリーン熱証書を購入し、20年に再エネ100%を達成した。右は広報戦略担当のエグゼクティブバイスプレジデント、カミラ・シルベスト氏<br><span class="fontSizeS">(写真/ノボ ノルディスク)</span>
福島県のノボ ノルディスク ファーマ郡山工場ではグリーン電力証書とグリーン熱証書を購入し、20年に再エネ100%を達成した。右は広報戦略担当のエグゼクティブバイスプレジデント、カミラ・シルベスト氏<br><span class="fontSizeS">(写真/ノボ ノルディスク)</span>
福島県のノボ ノルディスク ファーマ郡山工場ではグリーン電力証書とグリーン熱証書を購入し、20年に再エネ100%を達成した。右は広報戦略担当のエグゼクティブバイスプレジデント、カミラ・シルベスト氏
(写真/ノボ ノルディスク)

EUタクソノミー開示を準備

 資源循環では、部材をバイオマス素材やリユース・リサイクル可能な素材に替える研究を進めている。糖尿病患者が毎日行うインスリン注射が週1回で済むインスリン製剤も開発中だ。臨床試験を進め、24年の発売を目指す。注射を年間365本から52本に減らし資源を削減できる。

 ノボはEU(欧州連合)タクソノミーに基づく報告書の準備も進めている。「タクソノミーが『サステナブル』と定義する活動の売り上げ、運営費、資本的支出のデータを詰めている。23年早々に年次報告で開示し、その後も毎年開示する」とエグゼクティブバイスプレジデントのカミラ・シルベスト氏は話す。

 サステナビリティ分野の幅広い要請に応えるため、同社は環境や社会課題の専門家10人による「サステナビリティ諮問委員会」を22年4月に発足させた。「合同会議を年2回開くとともに、委員からは年間を通じて指針を提供してもらい、助言をビジネス戦略に生かす」とシルベスト氏。専門家やサプライヤーの協力を得て高い収益力とESGを両立させていく。