気候関連情報の開示を義務付ける米SECの開示規則案の策定が大詰めを迎えている。ステークホルダー資本主義を唱えるビジネス・ラウンドテーブルが反対を表明した。

 米国の首都ワシントンに本部を構える米主要企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルが、米証券取引委員会(SEC)の「気候関連開示規則案」に反対意見を表明した。この新たなルールは、企業に対して初めて温室効果ガス排出量と気候変動リスクの開示を義務付けるものだ。

 ここ3年にわたり、ビジネス・ラウンドテーブルは会員企業がより環境に配慮した組織であることをアピールしようと努めてきた。2019年、「株主第一主義」からの脱却を言明し、会員企業の大多数が「ビジネス全体で持続可能な取り組みを行い、環境を保全する」ことなどを約束した。しかし、SECが22年3月に提出した開示規則案を巡り、内容を修正するよう声高に求めている。

 一方、米マイクロソフトや顧客情報管理の米セールスフォースはSECの開示規則案をおおむね支持しており、ビジネス・ラウンドテーブルとの見解の相違が浮き彫りになった格好だ。

 ビジネス・ラウンドテーブルは、「我々はSECに修正案を発表するよう強く求める」と述べた。企業に対して監査済みの財務諸表に温室効果ガス排出量の情報を盛り込むことを義務付けるSECの要件は、「実行不可能」だと続けた。同団体の会長は、ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が務める。

 米商工会議所もSECの開示規則案を批判しており、要件の緩和を求めている。商工会議所とビジネス・ラウンドテーブルは、ワシントン有数のロビー団体だ。政治資金の動きを調査する非営利組織オープン・シークレッツによると、両団体が支払った年初からのロビー活動費用は合計で2390万ドル(約32億5000万円)に上る。

 パブリックコメント期間の最終日だった22年6月17日までに、SECのウェブサイトには数千件のコメントが寄せられた。最終的な開示規則は、早ければ年内にまとまる可能性がある。

 5人のメンバーで構成されるSECは民主党委員が過半数を占めていることから、ビジネス界からの反発をよそに、開示規則案は可決される見通しだ。ただし、これまでSECの動きを批判してきた企業や野党・共和党議員が訴訟を提起することはほぼ間違いない。

 しかし、大企業がSECの開示規則案に完全に見切りをつけたわけではない。

マイクロソフトは支持

 マイクロソフトは大企業による温室効果ガスの全排出量の定期報告を支持しており、これにはサプライチェーン全体の排出量を示す「スコープ3」の報告も含まれる。通常、スコープ3排出量は企業の温室効果ガス排出量で最も大きな部分を占めるが、測定するのが一番難しい。

 同時に、マイクロソフトはSECに対して財務諸表での開示要件を取り下げる一方、企業が提出する開示報告書に排出量情報の記載を義務付けるよう求めた。

 セールスフォースも、あらゆる排出量情報の開示は「気候変動に関わる短期的および長期的なリスクを把握するために必要不可欠だ」と述べている。

 米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)などの大手年金基金は、SECの開示規則案を支持している。一方、米ステート・ストリートなど一部の資産運用会社は、スコープ3排出量は「自主的な開示にとどめるべきだ」と主張している。

Patrick Temple(c)The Financial Times Ltd.2022 Jun.18