世界のサステナブル投資額は2020年に35.3兆ドルに達し、18年比で15%伸びた。市場が活況を呈する中、英資産運用会社が気候変動の影響評価で新たな手法を導入した。

 サステナブル投資の広がりに伴い、機関投資家のリスク評価手法も高度化している。英アバディーン・スタンダード・インベストメンツは、気候変動の影響を精緻に分析する手法を開発、運用に組み入れている。手法の特徴について、同社戦略的資産配分 調査部門ヘッドのクレイグ・マッケンジー氏に聞いた。

新たに開発した「気候シナリオ分析」の特徴は。

クレイグ・マッケンジー 氏
アバディーン・スタンダード・インベストメンツ 戦略的資産配分 調査部門ヘッド、気候変動運用戦略 ポートフォリオ・マネージャー。気候変動シナリオ分析やカーボンニュートラルイニシアティブを主導する
(写真:アバディーン・スタンダード・インベストメンツ)

クレイグ・マッケンジー 氏(以下、敬称略) 大きく2つある。1つは、地域や業種ごとに固有の前提条件を設定していることだ。例えば、公益や運輸部門での脱炭素化のペースは、日本や米国に比べて欧州がはるかに速い。欧州諸国の多くは、2030年に新車販売でガソリン車をなくす目標を出しているが、他の国は目標がないか、目標年度がもっと先になっている。

 こうした違いを反映し、脱炭素経済へ移行する過程で市場の需給バランスがどう変わるかといったところまで考慮して分析、評価している。一般に使われるシナリオの場合、全世界で一律の炭素価格を設定するなど、地域の差なく影響が及ぶ前提になっているが、現実はそうならない。

 もう1つは、14の異なるシナリオを設けていることだ。世界の気温上昇を「1.5℃」「1.5℃以上2℃未満」「2.2℃」など細かく分けている。既存のシナリオは「1.5℃」と「3℃」といった極端な条件のみを設定している。投資家が求めているのは、蓋然性がより高いシナリオで、我々の分析モデルはそれを提供できる。

この分析モデルを活用すれば投資リターンを増やせるか。

マッケンジー 判断するには時期尚早だが、理論的には気候リスクをより精緻に分析できれば高い利益率を出せるはずだ。

運用にどう組み入れているのか。

マッケンジー ポートフォリオマネジャーは個別銘柄の評価に反映できるようになっている。戦略的な資産配分を担う私たちは、今、それぞれのシナリオごとに期待リターンを算出しているところだ。

 その結果、株式の方が債券よりも気候リスクのインパクトが大きいことや、同じ業種でも個別銘柄ごとにインパクトの大きさにバラつきがあることが分かってきた。

 21年1月には、この分析モデルを活用した「マルチアセット気候変動運用戦略」を立ち上げた。太陽光や風力発電を手掛けている事業者や、電気自動車や蓄電池のメーカーなど、脱炭素化に寄与する企業に特化して組み入れている。株式や債券、インフラに資産をそれぞれ何%配分するか、気候シナリオ分析によって予想利益率を試算しながら決定している。

 個別銘柄についても、現在の株価が割高か割安かを判断するのに気候シナリオ分析を活用している。環境分野は昨今、株価が上昇しているため投資判断が難しくなっている。気候シナリオ分析を活用して株価が割高になっていないかを判断できる。