ESG目標の達成によって条件が変わる金融派生商品が登場した。アシックスが、サプライチェーンの脱炭素化に活用する。

 アシックスは2021年7月21日、先物外国為替予約にESGを組み合わせた「ESG為替予約」の利用を開始した。提供は三井住友信託銀行。企業のESG強化をうたう金融派生商品の活用は、国内企業で初めてである。

 アシックスは、東南アジアの生産協力会社が生産した商品を仕入れている。この支払いに関する為替を予約することで、為替レートの変動リスクを回避する。具体的には、24年4月を期日として三井住友信託銀行から2000万~3000万ドルのドルを調達し、海外の生産協力会社への支払いに充てる。予約レートは1ドル110円程度である。もし、24年4月以降の支払い時に1ドル120円になっていたとすると、支払額は3億円増える。為替予約でこのリスクを回避する。

■「ESG為替予約」の仕組み
アシックスが採用したESG為替予約のイメージ。先物為替予約にESG目標を組み合わせた。目標を達成できなかったら調達額の一定割合を寄付する

海外取引先の脱炭素を支援

 経理財務統括部財務部長の西井岳氏は、「為替リスクの回避だけでなく、サプライチェーンの脱炭素化を実現するきっかけにした」と導入の理由を話す。同社は海外に供給網を持ち、サプライチェーン全体の脱炭素化が課題となっている。ESG為替予約で調達したドルは、生産協力会社への支払いに使う。その際、原材料購入費や給与の支払いだけでなく、脱炭素化の設備投資にも充ててもらう。こうしてサプライチェーンの脱炭素化と関係強化を狙う。

 アシックスが定めたESG目標を達成できたかどうかで、三井住友信託銀行に支払うコストが変わる。目標は、CDPが24年2月に発表予定のサプライヤー・エンゲージメント評価で最高評価を獲得することだ。目標が達成できた場合は通常の為替予約と同じだが、達成できなかった場合は調達額の一定割合を追加で支払い、同社が定めるサステナビリティ・ビジョンに合致する団体へ寄付する。この追加コストが、アシックスに目標達成を促す役割を果たす。設定目標の妥当性はサステナビリティ・リンク・ボンド原則に準拠することで確保した。

 商品を提供した三井住友信託銀行の狙いは何か。マーケット企画部長の松本洋志氏は、「企業のESGの支援が、新規顧客の獲得につながる」と話す。ESGに関連した企業への金融支援はこれまで債券や融資などの資金調達が主だった。金融派生商品は財務活動全般で商品を提案できるので、顧客の幅が広がる。今後、これ以外にもESGを組み込んだ金融派生商品が登場しそうだ。