企業に温室効果ガス削減目標の設定を求めるSBTイニシアチブ。削減ペースの加速を要請するとともに、自力削減量の目安を示した。

 企業に対し、温室効果ガス削減目標の自主的な設定を求める「SBTイニシアチブ」が2021年7月、企業への要請をいっそう強めると発表した。

 現在、SBTイニシアチブは5〜15年先まで年率2.5%以上削減する目標を「科学的知見と整合する目標(SBT)」であるとし、企業に認定を与えている。22年7月15日からは、5〜10年先まで年率4.2%以上、10年後が目標年なら42%以上削減する目標にSBT認定を与える。

 世界で年率2.5%のペースで温室効果ガスを削減すると、平均気温の上昇を産業革命前と比べて「2℃よりも十分に下回る水準」に抑えられる可能性が高い。年率4.2%なら、1.5℃に抑えられる可能性があるという。

 日本や欧州連合(EU)、米国などは気温上昇を1.5℃に抑えるため、30年に46%や50%前後の削減を目指す。SBTイニシアチブは企業にも、同水準の1.5℃目標を求める。

 21年8月22日までに2℃目標などのSBT認定を取得した企業は世界858社に達し、SBTは削減目標の世界標準となっている。今回の水準引き上げ後、SBT認定を得たい企業はより厳しい1.5℃目標に挑むことになる。

 1.5℃目標の認定を既に得た企業は519社と、ここにきて急増中だ。「事業コストに占めるエネルギーコストの割合が小さく、またエネルギー需要の多くを電力で賄う企業なら、再生可能エネルギーなどCO2ゼロ電力の採用で達成を見込みやすい」と、みずほリサーチ&テクノロジーズの森史也・主任コンサルタントは話す。裏返せば、そんな条件のそろう業種は1.5℃目標を設定している企業かどうかが問われそうだ。

企業の思惑とずれ

 SBTイニシアチブは企業による50年の排出実質ゼロ目標でも、新たな見解を示し、注目されている。

 「実質ゼロ」の達成について、「排出量を自力で削減し、どうしても削減できない排出量は、他者が行う森林などの吸収量で相殺する」という認識が一般的だ。ただ、どれだけ自力削減すべきか、共通の見解はない。

 そんななか、「ネットゼロ基準の基礎的考え方」という文書で、世界の産業全体で50年に90%の自力削減が必要とし、業種ごとの削減量を示した。発電業界は99%が自力削減で、森林吸収は1%しか利用できない。

■ SBTは世界の産業全体で温室効果ガスの90%削減を求める
SBTイニシアチブは、業種ごとに50年までに自力で削減する温室効果ガス排出量の削減割合を示した。自力削減にはCO2回収・利用・貯留(CCUS)による削減を含める(出所:SBTイニシアチブの資料を基にみずほリサーチ&テクノロジーズ作成)
SBTイニシアチブの「ネットゼロ基準の基礎的考え方」案(出所:SBTイニシアチブ)

 SBTイニシアチブは21年10月18日にネットゼロ基準を固める。だが、50年の自力削減量が企業の想定や思惑と異なり、議論を招く可能性もある。