明治ホールディングスがROEとESGを踏まえた経営指標を打ち出した。海外の競合に引けを取らないESGで、海外展開の巻き返しを狙う。

川村 和夫 氏
川村 和夫 氏
明治ホールディングス 社長CEO(写真:中島 正之)

 明治ホールディングスが2021~23年度の中期経営計画で、独自の経営指標「明治ROESG」を打ち出した。自己資本利益率(ROE)とESGの評価を組み合わせた目標だ。社長CEO(最高経営責任者)の川村和夫氏は、「企業価値の要素が財務から非財務にシフトしている。これは競争ルールの変更。当然、経営指標も変更する必要がある」と語る。

 「明治ROESG」は、ROE、外部評価機関によるESGスコアの達成度、「明治らしさ」の目標達成の3つでポイントを算出する。

 ESGスコアは、MSCIやDJSI、CDPなど国際的なESG評価機関による5つの格付けだ。例えばMSCIの同社の格付けは、20年度はBBだったが、23年度までにAを目指す。5つの目標を達成すると1.2倍、4つだと1.0倍、3つ以下は0.8倍とする。

 これに、明治の手掛ける健康志向食品の売上高の伸長率など、「明治らしさ」の目標達成を加点要素とした。達成ごとに1点を加算する。

 20年度の「明治ROESG」は9ポイントだった。23年までにこれを13ポイントに高める。結果と役員報酬を連動させて実効性を確保する。

 21年、北米の機関投資家との対話で、「重視するのはROEなのかESGなのか」と問われた。川村社長は、「両方だ。ROEの追求にESGの視点を取り入れ、企業価値の最大化を図る」と答える。その姿勢を端的に示したのがこの指標である。

■ 「明治ROESG」の算出方法
■ 「明治ROESG」の算出方法
ROE:自己資本利益率
明治ホールディングスは、ROEとESGを踏まえた目標の達成度を指標化し、経営指標に採用した。ROEとESGの両方の推進を狙う

中長期の投資家にアピール

 食品・医薬品を手掛ける競合のROEと株価純資産倍率(PBR)を比べてみると、同社がこの経営指標を打ち出した狙いが見えてくる。

 21年8月16日時点の明治HDのROEは11.1%で、PBRは1.5倍である。競合と比べるとROEは高いが、PBRが低い。PBRは株価を反映しており、将来の成長期待を表す。つまり、ESGによってもたらされる将来利益への期待が低く、これが株価の伸び悩みにつながっている。

 同社は、09年の明治製菓と明治乳業の統合後、主力事業を成長させながら、時価総額を伸ばしてきた。15年2月に時価総額1兆円を突破。16年7月の株価は上場来高値の1万930円をつけた。15年以降も、営業利益と配当の拡大を続ける優良企業だ。

 しかし、ここ数年の株価は低下傾向にあり、現在は6800円前後で推移している。国内市場をがっちりつかむ一方、将来成長のための商品開発や戦略実行が課題で、これが市場の期待の低さとして表れている。そこで「明治ROESG」を将来成長を示す「旗印」とし、ESGを重視する中長期の投資家にアピールする狙いがある。