国内の競合を見渡すと、キリンホールディングス、味の素、ヤクルト本社など、経営方針に「食と健康」や「食と医」を掲げる企業は多い。現在は、機能性ヨーグルト「R-1」や原材料にこだわった高品質チョコレート「明治ザ・チョコレート」などが売り上げをけん引するものの、この先、競争激化が予想される。いかに、「明治らしさ」のあるヒット商品を生み出せるかが鍵となる。「明治ROESG」の指標に「明治らしさ」を加えたのはこうした理由がある。タンパク質やインフルエンザワクチンの指標は、同社が強みを持つ分野だ。

■ 食品・医薬品業界のROE、PBR、時価総額の比較
■ 食品・医薬品業界のROE、PBR、時価総額の比較
注:円の中心がROEとPBR。円の大きさは時価総額を表している。数値は2021年8月16日時点の日経会社情報から
食品・医薬品業界のROEは10%前後でほぼ横一線。明治ホールディングスのPBRは1.5倍で他社と比べて低く、ESGを踏まえた将来価値を企業価値に反映できていない可能性がある

 19年4月にホールディングス内に、傘下の研究所を統合した「価値協創センター」を設立し、食と医を融合した新商品の開発を進めている。川村社長は、「抗老化や腸内細菌などに注目している。23年までには明治らしさを体現した新商品・サービスを提供したい」と話す。

ESGで海外に名乗り

 国内市場は、人口減少によって縮小していくことが予想される。将来成長には、海外展開が欠かせない。同社の食品セグメントにおける20年度の海外売上比率は4.6%と、海外を攻めあぐねている。23年度までに中国拠点の生産能力を2~4倍に増強し、26年までに海外売上高比率を20%まで高めたい考えだ。

 ただし海外には、スイスのネスレやフランスのダノンなど、巨大な競合が立ちはだかる。これら海外の競合は、ESGの先進企業でもある。当然、引けを取らないESG評価が必要となる。海外の主要なESG評価機関のスコアを評価指標にしたのはそのためでもある。

 20年6月にサステナビリティの最高責任者を設置し、経営とESGの融合を図ってきた。川村社長は、「この1年、あらゆる場面でESGの重要性を訴えてきた」という。その結果、「ESGの意識が社員に浸透してきた実感がある。この意識が商品やサービスにつながれば、市場の期待に応えられる」と話す。

 ESGが物語る将来利益を現実のものにできるか。正念場を迎える。