企業不正の原因究明に携わってきた国広正弁護士が、株主総会で東芝と対峙した。「アクティビスト」を黒船の襲来に例え、過度な防衛をする企業に警鐘を鳴らす。

 「東芝は私が子供の頃から大好きな会社。そんな私がなぜ“旧村上ファンド系”という風評のあるエフィッシモの代理人となってこの株主総会の場にいるのか」

 2020年7月31日の東芝の株主総会。株主提案者をしたエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの法務アドバイザーを務めた国広総合法律事務所の国広正弁護士が、エフィッシモの代理人として説明に立った。これは、その冒頭の発言だ。

 エフィッシモはシンガポールの投資ファンドで、東芝が2017年に米原発事業で債務超過に陥った際、約6000億円の増資を引き受けた約60社のうちの1社である。今回、東芝子会社の東芝ITサービスによる架空循環取引事件を問題視し、エフィッシモ創業者の今井陽太郎氏を含む3人の取締役候補を擁立した。今井氏は旧村上ファンド出身だが、国広氏は「私の人生経験に照らし、今井氏を信用する」と訴えた。

 国広氏がエフィッシモ側についたのは、東芝の企業価値向上には取締役の改革が必要だとしたエフィッシモの考えに賛同したからだ。株主総会に向けてそこを株主に訴えたが、結果は東芝側の勝利に終わった。

東芝が2020年7月31日開催した株主総会では、モノ言う株主である投資ファンドが独自の取締役候補を提案した。会社提案は可決されたが、車谷暢昭社長の賛成比率は57.96%で、薄氷の選任となった
(写真:東芝)

 国広氏は、「アクティビストは企業の敵という風評に苦しんだ」と振り返る。このイメージが、企業の閉鎖的な意識を強固なものにしており、対話を退ける言い訳になっていると指摘する。国広氏に聞いた。

「旧村上」の風評、払拭できず

株主総会は会社側の勝利で終わった。この結果をどう捉えているか。

国広 正 氏
国広総合法律事務所 弁護士(写真:中島 正之)

国広 エフィッシモの株主提案は否決されたが、エフィッシモ創業者で取締役候補となった今井陽一郎氏の賛成率は43.4%と過半に迫り、株主の一定の理解は得られたと考えている。しかし、負けは負けだ。私の力不足に尽きる。理由は2つある。

 1つは、東芝グループの子会社リスクを管理するには、フットワークの軽い社外取締役が不可欠という主張を株主に理解させることができなかったからだ。社外取締役には「重鎮」をそろえるというのが今の常識だ。この常識を打破できなかった。

 私は、今の東芝の取締役が良くないと考えているわけではない。この事件を契機にして、足を使って課題解決を実践する社外取締役が必要だと主張した。しかし東芝側の、「社外取締役の実績は十分で、数も十分」という反論を崩せなかった。

 もう1つは、「旧村上ファンド」という風評を払拭しきれなかったことだ。エフィッシモは旧村上ファンドとたもとを分かつ形で設立された投資ファンドだ。「ハゲタカ」「目先の利益を追求」といった根拠のない風評が予想以上に強かった。