米検索最大手がESG債を通して、格差是正と環境配慮を強化する。資本市場は期待し、政府は規制に走る中で、企業体の真価が問われる。

 米検索最大手グーグルの親会社、アルファベットは2020年8月、環境関連と社会貢献に使途を限定した社債、サステナビリティボンドを発行すると発表した。

 アルファベットとグーグルのCFO(最高財務責任者)を務めるルース・ポラット氏は、その狙いについて「設立から20年以上にわたってグーグルの製品は人々の生活改善に貢献してきた。環境や社会責任を果たしつつ、事業を展開することは創業以来の理念でもある」との声明を出した。

米シリコンバレーのグーグル本社の様子
(写真提供:アルファベット)

 起債額は57億5000ドル(約6000億円)に及び、社会貢献と環境配慮に資金を注ぐ。

 社会貢献では、人種間格差の是正に向けて黒人が経営する企業へ出資する。特に黒人の経営するスタートアップ企業に出資したり、黒人のコミュニティーへの資金供給に使ったりするという。さらに新型コロナウイルスで影響を受けた中小企業への支援にも充てる。

 すでにアルファベットは2007年から再生エネルギーの調達を進め、削減が難しい排出量を、排出枠の購入で相殺して「カーボンニュートラル(炭素中立)」を実現するなど環境活動に力を入れている。主要製造拠点で再エネプロジェクトに約1億5000万ドル(約160億円)を注ぐなど、投資も強化している。

 サステナビリティボンドの環境配慮への使途は、エネルギー効率化投資や再生エネルギー投資、電気自動車(EV)関連のインフラ投資などとしている。

過去最低の低利率で調達

 アルファベットはこの起債で、償還期限の異なる6種類の社債(合計は100億ドル=約1兆500億円)の発行条件を決め、そのうち5年債と10年債、30年債の3本をサステナビリティボンドとした。どれも過去最低利率での調達となり、うち5年債の利率は0.45%で、米アマゾンや米ファイザーが過去に発行した同様の債券の利率よりも0.8%低く、注目を集めている。

 この起債は、同社の今後を占う絶妙のタイミングで行われたとも言える。資本市場が今後に期待を示す一方で、米政府は大きな懸念を示しているからだ。

 米政府は20年7月に、アルファベットなど米IT大手4社の最高経営責任者(CEO)を議会に呼び、公聴会を開いた。質疑応答は、5時間余りに及び、議員らは、4社が圧倒的な力でライバル企業を制圧し、競争を妨げていると批判した。一方で資本市場からの期待は強い。サステナビリティボンドの低利率が示すだけではなく、株式市場におけるアルファベットの時価総額は1兆ドル(約105兆円)を超える上昇を見せ、イノベーションへの期待を一身に背負っている。つまり政府と市場での評価が正反対の状態にあるのだ。

 こうした中でアルファベットはESG重視企業であることを自ら宣言して、社会からの評価をさらに高めようとしている。ポラットCFOは「サステナビリティボンドの投資については透明性を持って進め、成果や状況について毎年公開する」としている。米国においても、人種間格差の是正は改めて大きな課題とされているだけに、その取り組みは債券の使途の検証にとどまらず、同社を判断する大きな指標になるだろう。