取締役会の女性比率向上を求める機関投資家の影響力が強まっている。仏アクサ・インベストメント・マネージャーズのマリー・フロマジェ氏に聞いた。
多くの国でジェンダーダイバーシティが課題になっている。解決の参考になる事例はあるか。

(写真:アクサ・インベストメント・マネージャーズ)
マリー・フロマジェ 氏(以下、敬称略)例えば、フランスは2011年に制定した法律で、企業の取締役会における男女平等を求めている。その結果、上場企業の取締役会の女性比率が世界で2番目に高い44%となるなど目覚ましい成果を上げている。ただ、法律で比率を決めてしまうと、能力ではなく女性だからという理由で取締役になるケースも起こり、男性が不利になるという批判もある。
これに対して、英国の場合は強制ではなく、産業界が任意で女性比率を高めようと取り組んでいる。それと同時に、複数の投資家が一体となって、役員や上級管理職の女性比率を高めるよう企業に働きかける仕組みがあり、これがうまくいっている。
さらに、250人以上の社員がいる企業に、男女間の賃金の差を毎年報告するよう義務付けている。透明性を高めることで、ギャップを埋めるために何をするか、具体的な行動につなげている好例だろう。
今後は市場の評価も、女性の才能を活用している企業とそうでない企業で評価が変わってくる。女性からすれば、男女を平等に評価する企業を選ぶので、ジェンダーダイバーシティを推進しているところは優秀な人材も集めやすくなる。
日本企業には10%以上
アクサ・インベストメント・マネージャーズは、エンゲージメントで男女平等を促進している。
フロマジェ私がエンゲージメントを担当している32社のうち12社が日本企業だ。この問題は一夜にして様変わりすることは当然期待できないので、3年のスパンで取り組みが成功しているかどうかを見ていく。例えば、データが全くそろっていなかった企業なら、管理職の男女比率を示すだけでも進歩したといえる。
19年は各社の進展状況を確認したので、20年は重要なポイントに絞ってフォローアップをしていく。改善が既に実行されている段階なのか、それとも検討している段階なのかといったことを判断していく。
議決権行使も活用しているか。
フロマジェ当社は20年から、取締役会に女性が10%以上いない企業に対して選任に反対することにした。日本企業も対象だ。先進国でジェンダーダイバーシティが進んでいる企業については、21年から取締役会に女性が3分の1以上いなければ否決する。この方針を企業に通知したところ、達成できそうにないという相談が来ている。20年は新型コロナウイルスの影響があるので免除になるところもあるだろう。
ジェンダーダイバーシティがなかなか進まない企業に対しては、投資家が働きかけるのは非常に重要だ。やはり議決権行使となると企業は急速に動き出す。議決権など使える手段は使いながら企業にアプローチし、改善を促していきたい。