金融商品がうたう「ESG」は本物か。各国の金融当局が監視を強化する。疑惑の目を向けられた独DWSは反論するも、株価は急落したままだ。

 「商品開発部門を中心に、金融商品の一斉点検を開始した」(国内大手運用会社)

 2021年8月25日、世界の資産運用業界に衝撃が走った。米国とドイツの金融当局がドイツ銀行グループの運用大手DWSに調査に入ったと、欧米メディアが一斉に報道したからだ。報道後、同社株価は13.7%下落。9月28日時点もその水準が続いている。

海外メディアが一斉に、米独の金融当局がドイツ資産運用大手DWSの調査に入ったと報じた<br><span class="fontSizeS">(写真:ロイター/ アフロ)</span>
海外メディアが一斉に、米独の金融当局がドイツ資産運用大手DWSの調査に入ったと報じた
(写真:ロイター/ アフロ)

 DWSは、運用資産7930億ユーロ(約100兆円)のうち4592億ユーロ(約58兆円)をESG投資(ESG統合運用資産)としている。しかし、21年3月まで同社グループ・サステナビリティー・オフィサーを務めたデジリー・フィクスラー氏が、この金額に誇張があると主張した。

 DWSは21年8月26日、「元従業員の申し立て内容を断固として否定する」と反論するコメントを発表した。

疑わしい商品は国内にも

 DWSの金融商品は国内でも販売されており、影響は国内に波及している。冒頭のコメントは報道を受けた国内運用会社の担当者の言葉だ。

 金融庁の監督担当者は、「ESGの名を冠した金融商品がセールスを優先していないか、世界中で厳しい目が向けられている。この動きは国内でも同じだ」と警鐘を鳴らす。

 例えば、投資信託に「ESG」という名称を付けながら、保有銘柄が一般の人気商品と変わらないケース。ESGの視点でなぜその銘柄を選んだのかという説明が目論見書や運用報告書に書かれておらず、「ESG」が単なる宣伝文句となっている。

 運用実績が乏しい昔の商品に「ESG」や「SDGs」といった名前を付けて再販売する例も出ている。こうした投資信託を集めてESGキャンペーンと称して販売する手法にも金融庁は目を光らせる。

 情報開示は、21年3月に欧州連合(EU)で施行されたサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)が広まりつつある。日本では6月に金融庁がサステナブルファイナンスに関する報告書を公表。金融商品に「ESG」や「SDGs」の名前を付ける際、「顧客保護の観点」の説明を求めている。

 「見せかけ」のESGは、顧客の不信感を増大させ、世界の金融リスクにつながる危険性もある。「ESG」の根拠は何か。資産運用会社は、この質問に明確に答える必要がある。