東急不動産ホールディングスはESG債の長期発行方針を打ち出した。長期ビジョンで掲げる環境経営に必要な資金を安定的に調達する狙いだ。

 環境や社会課題の解決に調達資金を充てるグリーンボンドやソーシャルボンドといったESG債の発行が世界で急増している。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、2021年のESG債の発行額は前年比59%増の8500億ドル(約93兆円)と過去最高額に達する見通しだ。

 そうした中、東急不動産ホールディングスは21年9月、社債残高に占めるESG債の比率を30年度末までに70%以上に引き上げる方針を策定、公表した。ESG債の長期発行方針を打ち出すのは国内で初めてという。

 21年8月末時点での同社のESG債比率は14%(400億円)。70%にするためには大幅な引き上げが必要だが、再生可能エネルギー事業やグリーンビルディングなど2000億円超のパイプライン(ESG債の資金使途候補)があるという。

■ 2030年度末にESG債の比率を70%に引き上げる
■ 2030年度末にESG債の比率を70%に引き上げる
■ 2030年度末にESG債の比率を70%に引き上げる
東急不動産ホールディングスは、社債残高に占めるESG債の比率を現在の14%から2030年度末までに70%に引き上げる。右の写真はグループ会社が運用するリエネ銭函風力発電所(北海道小樽市)
(写真:東急不動産ホールディングス)

 今回の方針は、21年5月に発表した長期ビジョン「グループビジョン2030」に基づくものである。成長の2本柱の1つに掲げる「環境経営」に必要な資金を調達する。

 グループ財務部財務グループグループリーダーの鈴木洋充氏は、「ESG債は今後、当たり前になると予想される。ニーズに合ったESG債を長期にわたって提供することで安定的に投資してもらえる。その結果、低コストで資金を調達できる可能性もある」と言う。

第1弾はリンク・ボンド

 方針に基づく第1弾として、ESG目標の達成度合いと発行条件を連動させる「サステナビリティ・リンク・ボンド」をこの10月にも発行する。発行年限は10年、発行額は100億円を予定する。利率は現在、検討中だ。

 今後は債券投資家とのエンゲージメント(建設的な対話)にも力を注ぐ。同社のESGの取り組みを理解、評価してもらう一方、投資家の意見を積極的に吸い上げる。

 世界的にESG投資が拡大する一方、環境や社会課題の解決に資金が使われるかのように見せかける「ESGウオッシュ」が指摘されている。東急不動産ホールディングスは、ESG債については外部機関の評価を得るとともに、投資家に対して説明を尽くす考えだ。「(ESGの)ラベルが付いていればいいというものではない。しっかり評価されるためには方針を示し、対話の場をつくっていくことが重要だ」(鈴木氏)。

 ESG債に対する投資意欲が高まっているが、企業は投資家を引き付ける一段の工夫が求められそうだ。