マイクロソフトが農業AIの提供を通じたCO2削減に乗り出した。IT大手や資源メジャーが、農地や森林の気候変動対策に進出している。

 米マイクロソフトが、農業での気候変動対策に乗り出した。2020年7月15日、米国の農業協同組合で食品メーカーのランドオレークとの戦略的提携を発表した。農業の効率向上と利益拡大、食品サプライチェーンの強化が目的という。ランドオレークと農家のつながりと、マイクロソフトのクラウド技術や人工知能(AI)との組み合わせで実現を目指す。

 ランドオレークの組合に参加する農家の6000万haに及ぶ農地が、マイクロソフトによる農業AIプロジェクトの対象となる。日本の国土面積を大きく上回る規模だ。

ランドオレークのベス・フォードCEO(左)とマイクロソフトのサティア・ナデラCEO。マイクロソフトが公開したビデオ対談の動画を撮影した

農地での削減効果を排出枠に

 2社は発表で、農業によるCO2削減効果と排出枠市場への参入を強調した。土壌はCO2を吸収し、ため込む(固定する)機能がある。気象や土壌、作物の生育などに関するビッグデータを基に、農作業の効率化とCO2の吸収・固定の拡大を両立できる情報を農家に提供する。加えて、農地で吸収・固定したCO2削減量を把握し、「土壌炭素クレジット(排出枠)」という証書にして、排出枠取引市場に供給すると明らかにした。

 マイクロソフトは20年7月29日にも、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を生かし、トークン(デジタル権利証)として、排出枠の環境価値を担保することも発表した。

 排出枠は、CO2などの温室効果ガスの削減実績を売買できるように証書にしたものだ。今は主に企業の温室効果ガス削減の手段として、欧州や日本など世界各地の市場で取引されていれる。企業がこれを買うと、その企業の削減実績として認められる。今回のプロジェクトでは、農地でのCO2削減効果を排出枠として売る予定だ。

 マイクロソフトは20年1月、30年までにCO2を自社の排出量以上に削減する「カーボンネガティブ」の実現を目指すと発表した。この気候変動戦略では、CO2回収・貯留(CCS)、大気中のCO2を回収する大気直接回収といった技術に加え、農地や森林保全にも投資する方針を示した。森林を保全すると、樹木の光合成による吸収量が拡大する。ランドオレークとの提携と排出枠の提供は、この戦略の一歩だ。

 農業や森林伐採などの活動による温室効果ガス排出量は、世界全体の排出量の約4分の1に当たる、年間120億tに上る。例えば、家畜のゲップや堆肥からは、温室効果ガスのメタンが発生する。肥料は一酸化二窒素の発生源となる。土地の耕運や森林伐採からも、CO2が排出される。これらを抑えるには、「家畜や肥料の管理のほか、土壌の状態の管理や、植林や森林再生などが効果を発揮する」と、気候変動対策に詳しいみずほ情報総研の内藤秀治コンサルタントは説明する。マイクロソフトは、無数のセンサーで情報を集約し、クラウド技術やAIによる効果的な管理を目指す。