他のIT(情報技術)大手や資源メジャー(国際資本)も、農地や森林などでのCO2削減に乗り出した。

 米アマゾン・ドット・コムは20年4月、NPOと提携し160万haの森林保全に1000万ドル(約11億円)を出資。森林管理により31年までに最大1850万tのCO2を吸収・固定する。

 また20年4月には、英蘭石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルが世界の約2000万haに及ぶ森林での植林を明らかにした。累積で最大3億tのCO2を吸収・固定するという。

 IT大手は、農地や森林のCO2吸収・固定を、脱炭素化や排出枠といった新ビジネスのフィールドと捉えている。一方、エネルギー・資源業界では、顧客の脱炭素化が進む中、化石資源と排出枠を組み合わせて販売するケースが見られる。

 19年6月には東京ガスが、シェルグループから実質排出ゼロの液化天然ガス(LNG)の調達を始めたと発表した。LNGのサプライチェーンで排出する全てのCO2を、シェルの排出枠で相殺したものだ。20年3月、実質排出ゼロの都市ガスの販売を始めた。

■ 大手企業が森林や農地の確保に手を伸ばしている
企業による近年の森林や農地への出資や投資、提携の事例のうち主なものを集約した
(出所:みずほ情報総研)
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農業対策が脱炭素の切り札に

 内藤コンサルタントによれば、農業や森林での気候変動対策への関心が高まる背景には、18年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「1.5℃特別報告書」の発表がある。

 報告書は、世界で50年前後に排出量を実質ゼロにすれば、気温上昇が1.5℃程度にとどまる可能性があると示した。これを受け、企業も温室効果ガスの削減目標を強化し始めた。

 ただ、発電所や製造業の工場、クルマの電化といった従来の気候変動対策だけでは、50年前後の脱炭素化は難しい。そのため「十分に対策が進んでいない、CO2吸収・固定の余地が残る農地や森林での対策強化に、IT大手や資源メジャーが乗り出した」と、内藤コンサルタントは話す。マイクロソフトは9月、シェルや英石油メジャーのBPとそれぞれ脱炭素化に向けた戦略的提携を発表しており、この動きは加速しそうである。

 こうした動向を受け、排出量を算定するための国際基準を示すイニシアチブ「GHGプロトコル」は、森林や農地などによるCO2吸収・固定量を算定する方法論を21年までに作成する。また、企業に対し、温室効果ガス削減目標の設定を求める「SBTイニシアチブ」も、CO2吸収・固定を目標の達成に使うことを認める方針を示している。

 脱炭素化のために再生可能エネルギー電力を調達する企業が増える一方、製造工程を電化しづらく化石資源を使う企業もある。後者のケースを中心に、農地や森林での脱炭素化と排出枠への需要が高まりそうだ。