日立は2050年度までに調達先を含む温室効果ガスの排出をゼロにする。サプライチェーンの脱炭素化がグローバル企業の条件になりつつある。

 日立製作所は2021年9月13日、調達先を含むサプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を50年度までにカーボンニュートラル(実質ゼロ)にすると発表した。日本の大手企業でこうした例は限られる。

 20年、日立の事業所と工場での生産による排出量を30年度までに実質ゼロにする目標を策定。社内炭素価格(カーボンプライシング)制度で省エネ設備の導入を促し、再生可能エネルギーを活用する。既に20年度時点で3つの事業所で実質ゼロを達成した。21年2月には10年間で840億円を投じると発表した。

 21年度は13事業所の実質ゼロを見込む。自社の事業所での化石燃料の利用による排出を示す「スコープ1」、購入した電力や熱の利用による排出を示す「スコープ2」では実質ゼロのめどが立った。

 だが、スコープ1、2の排出量はサプライチェーン全体の4.6%にすぎず、「スコープ3」に当たる調達先や、製品を使う客先での排出削減が課題になっている。

取引条件にせず「要請する」

 スコープ3でも「販売した製品の使用」による客先での排出が最も多い。ただ、製品の省エネや電化が進み、世界のカーボンニュートラル政策の下、電力の脱炭素化が進めば実質ゼロの見通しは立つ。例えば20年度の売上収益約8兆7291億円の13%を稼いだモビリティ事業では、エネルギー効率の高い高速鉄道車両や蓄電池ハイブリッド車両などを提供していく。

■ 日立はスコープ3の削減が課題
■ 日立はスコープ3の削減が課題
日立はサプライチェーンのうち、温室効果ガス排出量の多い「販売した製品の使用」や「素材や部材、サービスの調達先」による排出を削減する。上の写真はイタリアで試験運転に成功した蓄電池駆動のトラム<br><span class="fontSizeS">(グラフ出所:日立サステナビリティレポート2021)</span>
日立はサプライチェーンのうち、温室効果ガス排出量の多い「販売した製品の使用」や「素材や部材、サービスの調達先」による排出を削減する。上の写真はイタリアで試験運転に成功した蓄電池駆動のトラム
(グラフ出所:日立サステナビリティレポート2021)

 また21年6月にはデジタルイノベーションを加速するための研究開発に3年間で1兆5000億円の投資を発表。エネルギー効率を高めるマネジメントシステム、水素関連技術などの研究開発も重点的に進め、顧客の脱炭素化に貢献する事業を育てる。

 素材や部材などを製造する調達先での排出削減にも手を打つ。

 国内外で約3万社ある調達先に、温室効果ガス削減の協力を求める。取引総額の約7割を占める約800社に、排出削減の計画を策定してもらう。21年7月に新たに発行したサステナブル調達ガイドラインを通じて協力を求める。「まずは取引条件にするよりも要請していく」(日立)。

 ソニーや米アップル、独フォルクスワーゲンなど、調達先に温室効果ガスの削減を要請する企業が増えている。サプライチェーン全体での脱炭素化は、グローバル企業に必要な条件になりつつある。