アマゾン、IBM、トヨタ――。注目企業のキーパーソンが、ESGを語った。新型コロナとデジタル化の波が、企業のESG経営を後押ししている。

 2020年8月31日から9月5日にかけて、持続可能な社会と経営の実現について議論する「日経SDGsフェス」が開催された。新型コロナウイルスが、企業のSDGsやESGの取り組みを加速させている。注目企業のキーパーソンが何を語ったのか。ダイジェストをお送りする。

大企業が低炭素をけん引

米アマゾン・ドット・コム ワールドワイド・サステナビリティ・バイスプレジデントのカラ・ハースト氏

 世界の注目企業が、ESG経営に舵を切っている。その1つが米アマゾン・ドット・コムだ。40年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を掲げた。同社のワールドワイド・サステナビリティ・バイスプレジデントのカラ・ハースト氏は、「目標の実現にはこの先の10年が特に重要だ」と言う。

 25年には自社の利用電力を再生可能エネルギーに転換し、30年には商品配送に使う10万台の配送車を電気自動車(EV)に切り替える。「世界的な大企業が低炭素技術を使って事業を実践するという宣言は、市場への大きなシグナルになる。これが低炭素社会をつくる動きにつながる」と語った。

トヨタ自動車デピュティ・チーフ・サステナビリティ・オフィサーの大塚友美氏

 トヨタ自動車は20年5月の決算会見で、豊田章男社長が「SDGsに本気で取り組む」と宣言した。同社は、同業各社が今期の利益見通しの公表を見送る中、黒字見通しを打ち出した。この背景についてデピュティ・チーフ・サステナビリティ・オフィサーの大塚友美氏は、「こうした状況でも赤字にならない強さを示したかった。そして、その強さを地球のために使うという気持ちを伝えたかった」と語った。

 自動車業界は、電動化や自動化などの技術革新が進んでおり、激しい開発競争の中にいる。トヨタでは、こうした最新技術を持続可能な都市づくりに生かす「ウーブン・シティ」構想を打ち出しており、静岡県裾野市の製造子会社跡地を利用し、21年から本格的に街づくりを開始する予定だ。大塚氏は、「街づくりは1社では実現できない。SDGs目標17のパートナーシップが鍵となる。未来により多くの選択肢を残したい」と語った。

IT企業の役割が高まる

 ESG経営の推進やSDGsの目標達成の鍵となるのがデジタル技術の活用だ。

米IBMのフェロー浅川智恵子氏。障がい者アクセスビリティの研究者で、自身も視覚障がいを持つ

 米IBMは、点字プリンターや音声読み上げソフトなど、古くからデジタル技術を活用した障がい者のアクセスビリティ向上に力を入れている。同社フェローで、自身も視覚障がいを持つ研究者の浅川智恵子氏が、最先端の取り組みを紹介した。

 紹介したのは、スマートフォンのカメラが身の回りの物体を学習する高精度なナビゲーションシステム、画像認識やAI(人工知能)を搭載したスーツケース「AIスーツケース」などだ。米国では社会実装が進んでおり、実用化が目前に迫っている。

 日本は、要素技術に強みがある。一方で浅川氏は、技術を組み合わせて社会実装を目指す段階に課題があると主張する。「日本は、法律、プライバシー、安全性などに対する壁が高い。社会の理解が必要だ」と指摘した。また、「インクルーシブ社会の実現に、技術が重要な役割を果たすのは確実。企業は、技術を最大限に生かし、雇用機会や仕事のやりがいにつなげるという意識を持ってほしい」と呼び掛けた。