自然豊かな尾瀬のシンボルが、温暖化や獣害の影響を受けている。このミズバショウをイメージして造られた日本酒が、尾瀬の自然を守る。

 群馬や福島など4県にまたがる尾瀬国立公園。山々に囲まれた湿地が広がる景勝地である。ここを彩る草花のうち、特に知られているのが白くかれんな姿のミズバショウだ。

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尾瀬(左)とミズバショウ(右)
(写真:永井酒造)

 近年、温暖化や、棲息するニホンジカの食害などでこの自然に影響が及んでいる。「尾瀬を訪れた時、ミズバショウの激減にショックを受け、夜も眠れなかった」と永井酒造の永井則吉社長は話す。尾瀬の地元、群馬県川場村にある造り酒屋だ。

 同社は2020年9月10日、ミズバショウの名を冠した日本酒の新商品を発売した。瓶のラベルにタレントの片岡鶴太郎氏が描いたミズバショウの絵を採用し、売り上げが上がるほど尾瀬の自然保護が進む仕組みを取り入れた。

地域と連携して栽培

発売された酒「MIZUBASHO Artist Series」は左からスパークリング酒、普通酒、デザート酒(写真:永井酒造)
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 地元で尾瀬の写真撮影を手掛ける三条印刷、70年近く尾瀬の管理を担う東京パワーテクノロジーと協力して「尾瀬の水芭蕉プロジェクト」を発足。新商品の売り上げの5%を、プロジェクトを通じて地元の尾瀬高校や地域ボランティアによるミズバショウの栽培事業や苗の育成事業に寄付する。尾瀬高校は、苗の移植の他、湿原の復元やニホンジカの調査を手掛けてきた実績がある。

 永井社長は「尾瀬の生態系を守り再生するこのプロジェクトを、地域とのパートナーシップを強化することで進める」と意欲を示す。SDGs(持続可能な開発目標)のゴール15と17の達成にも貢献する考えだ。

 酒は、ミズバショウの姿を思わせる、花の香りと柔らかい味わいが特徴だ。ワインのようにスパークリング酒やデザート酒も造った。4500億円規模の日本酒市場を上回る、20兆円規模に及ぶワイン経済圏の中心地、フランスやシンガポールなどに輸出もする。群馬のコンニャクや和牛、酒器とともに新商品をアピールし、日本の酒文化と尾瀬の自然を、世界に発信する。