ブラジルがダイキン工業の強い後押しでエアコンの省エネ基準を改正。行政や大学、NGOなどの意思を束ね、抵抗勢力に打ち勝った。

 ブラジル政府は2020年7月、空調機の省エネ基準を改正し、性能評価試験の国際規格ISO16358を導入した。新しい基準づくりを主導したのは、空調大手のダイキン工業だ。

 同社は14年にブラジルでエアコンの現地生産を始めたが、市場シェアは1桁と伸び悩んでいた。省エネ性能に優れる同社のインバーター機も、性能が劣る他社の非インバーター機も最高のAランクに分類され、価格の安い非インバーター機が市場を席巻していたのである。

 「ブラジルの消費者は無駄に電力を使い、環境に悪影響を与えている。とても見過ごせなかった」というダイキンブラジルの三木知嗣社長は、省エネ基準を変えようと動き出す。だが、現地のエアコン工業会でいくら基準改正の必要性を訴えても、自社にとって不利な改正に現地メーカーが賛同することはなかった。

 そこで三木社長は、ブラジルで省エネの権威といわれるサンタカタリナ連邦大学のホベルト・ランバート教授を訪問する。両者は意気投合し、まずはダイキン製エアコンの省エネ性能を証明しようと、3つの大学で実証試験を行うことにした。

JICA事業の採択が契機に

 18年3月、国際協力機構(JICA)の民間技術普及促進事業として、ダイキンのブラジルでの事業が採択されると、基準改正の流れは加速する。

 「ブラジル経済省のキーマンにJICAの仲介で会えたのが大きな契機になった」と、ダイキン工業CSR・地球環境センターの小山師真課長は語る。以後、エネルギー省や電力公社、エアコン試験機関、規制当局などをつぶさに訪問し、「実証試験のデータを示しながら基準改正の必要性を訴え続けた」(小山課長)。現地産業界から反対意見も出たが、19年3月、規制当局はついに省エネ基準の改訂を進めると宣言した。

 その後もブラジルの関係者を日本に招へいして、日本政府との意見交換やダイキンのエアコン工場の視察を行うなど積極的に後押しし、20年7月の省エネ基準改正に至った。

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2019年10月にブラジルの視察団が来日し、資源エネルギー庁やエアコンの試験機関、ダイキンの滋賀工場などを訪問した
(写真提供:ダイキン工業)

 「もともとブラジルの規制当局や学識者も基準改正が必要と感じていたが、ダイキンの熱意によって一気に火がついた」と、JICA民間連携事業部の山口ダニエル・亮氏はスピード改正が実現した背景を語る。

 「現地キーマンとの連携が鍵だった。ランバート教授や環境NGOのリーダーに何度も励まされ、前に進むことができた」と三木社長は“同志”への感謝を表す。

 省エネ基準改正を機にダイキンはブラジルでのエアコン市場シェア拡大に弾みをつけたい考えだ。