ノーベル物理学賞が、気候変動対策の基礎となる研究開発に贈られた。受賞した真鍋博士は、気候変動は人々の行動にかかっていると警鐘を鳴らす。

 10月5日、2021年のノーベル物理学賞が、米プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎博士とドイツ・マックスプランク気象研究所のクラウス・ハッセルマン博士、イタリア・サピエンツァ大学のジョルジオ・パリジ博士に授与されることが決まった。日本人のノーベル賞受賞は、米国籍を取得した人を含めて真鍋博士で28人目、物理学賞では12人目となる。

2021年のノーベル物理学賞を受賞した米プリンストン大学の真鍋淑郎博士は21年10月5日、同大で行われた記者会見に出席した<br><span class="fontSizeS">(写真:ロイター/アフロ)</span>
2021年のノーベル物理学賞を受賞した米プリンストン大学の真鍋淑郎博士は21年10月5日、同大で行われた記者会見に出席した
(写真:ロイター/アフロ)

 真鍋博士らが開発した「気候モデル」は、21年7月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会が発表した「第6次評価報告書」に集約される気候研究でも使われた。気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)などを舞台とする気候変動交渉の土台にもなっている。

 国立環境研究所地球システム領域の江守成多副領域長は、「気候モデルは現在、人類が直面する気候変動という大問題に取り組む上で、欠くことのできないツール。その源流には真鍋さんがいる」と見ている。

 温暖化を予測する際には、大規模なコンピューターを使って試算する。この計算のために、物理的な法則に基づき大気や海の動き方、熱の循環の仕方を再現する数値モデルを「気候モデル」と呼ぶ。

 日本から米国に渡った真鍋氏は、開発した気候モデルを使って、CO2が倍増すると気温が約3.5℃上がることを1975年に試算した。今も世界中の科学者が、気候予測の精度を上げるため、自然の仕組みを解明しようとしのぎを削っている。

問題は「どう対応するか」

 「日経ESG」の前身である「日経エコロジー」による2000年の単独インタビューで真鍋博士は、「温暖化が本当であることはほぼ確定として、問題はそれにどのように対応するかだ」と話し、「(大勢の人が)自分の生きている間は温暖化は大したことにならないと思っているだろう。自分の死後まで心配できる余裕のある人がどのくらいいるか。今、痛みを感じることなら本気の度合いも違うのだろうけど」と言い添えた。

 気候モデルは、将来の気温上昇を示唆してくれる。だが、実際にどれだけ気温が上昇するかは、我々の判断と行動にかかっている。

※日経エコロジーに掲載したインタビューは以下からお読みください「恐竜の時代に近づく気象、忍び寄る危機」