世界の企業の取り組みが今のままではパリ協定の目標達成は相当厳しい。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を機に流れを変えられるか。

 ESG評価機関の米MSCIは2021年10月、企業の気候変動対策の進捗度合いを公表した。「ネットゼロ・トラッカー」と呼ぶもので、世界の上場企業約9200社を対象に分析し、結果を四半期に一度公表している。最新の結果では、パリ協定の「2℃目標」を達成できる見込みの企業は43%と半数に満たないことが明らかになった。「1.5℃目標」では10%となり、さらに少ない。

 MSCIアジア・太平洋地域責任者の長澤和哉氏に話を聞いた。

ネットゼロ・トラッカーの最新結果を公表した。

長澤 企業や政府の取り組みが今のままでいくと、世界の平均気温は産業革命前と比べて3℃上昇する。パリ協定の目標達成に向けて動いているが不十分だ。

脱炭素で明暗くっきり

 ネットゼロ・トラッカーは、企業の足元でのCO2排出削減ペースを見て将来を予測している。最新の分析では、43%の企業が2℃シナリオについていけているが、1.5℃シナリオに対応できているのは10%だ。

 現在、化石燃料ベースからクリーンエネルギーベースの経済への移行が進んでおり、この先、業種や企業の評価が大きく変わってくる。気候変動への取り組みによって、勝ち組と負け組がはっきりするだろう。多少遅れている企業は巻き返せるが、大きく遅れている場合は事業そのものの存続が苦しくなる可能性が高い。財務的価値にも年々影響が及び、パフォーマンスが落ちていくと考えている。

■上場企業9200社の9割が「1.5℃目標」に整合していない
■上場企業9200社の9割が「1.5℃目標」に整合していない
■上場企業9200社の9割が「1.5℃目標」に整合していない
米MSCIの分析によると、世界の上場企業約9200社の9割が、「1.5℃目標」に整合していないことが分かった。写真は、MSCIアジア・太平洋地域責任者の長澤和哉氏
(写真:MSCI)

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)での注目点は。

長澤 気候変動に関する情報開示がどの程度統一されるか、強制力をもって適用されるかが大きな論点になる。気候変動対策を促進する上で、金融機関による資本のリアロケーション(再配分)や資産のリプライシング(価格の再設定)が重要で、情報開示がどれだけ進むかが大きく影響する。

今後、企業の評価で重要性が増すESG課題は何か。

長澤 特に重要なのはガバナンスだろう。企業がどういう倫理に基づいて行動しているか、それをどう監督・管理しているかがポイントになる。例えば、巨大IT企業の租税回避の問題が議論されているが、企業市民としてどういう行動を取っているかが重要になる。