企業の生物多様性保全の取り組みに資本市場の目が向き始めた。自然に関する情報開示の枠組みなどが投資家の判断に影響を与えそうだ。

 第一生命保険は2021年9月、英アングリアン水道会社が発行する生物多様性保全を目的とするグリーンボンドを全額(約39億円)購入したと発表した。年限は5年、利回りは約1%である。生物多様性保全に特化した社債は世界でも珍しい。

生物多様性は大きなリスク

 第一生命が生物多様性債に投資する背景には、生物多様性を含む自然資本が金融システムの安定性に影響を及ぼすリスクと認識され始めたことがある。例えば、21年6月に、自然資本に関するリスクや機会について企業に情報開示を求める「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が発足した。

 同社は、生物多様性は今後重要度が増すとみており、課題解決に向けて資金需要の拡大を見込む。今回、発行体企業と対話を重ねながら、取り組み姿勢やプロジェクトの内容を精査し、投資を決断した。

 アングリアン水道会社は、上下水道の建設・運営管理を手掛けている。調達した資金は、湿地を活用した水処理施設の整備や、河川や水辺を再生して在来生物の生息を促すプロジェクトなどに充てる。国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則に準拠し、第三者機関から認証を得た。原則に準拠するだけでなく、プロジェクトのインパクトを定量的に測定、報告する。

 第一生命保険外国債券部外国社債課マネジャーの加藤由嗣氏は、「(資金が環境や社会課題の解決に使われるかのように見せかける)ESGウオッシュに対する目が厳しくなっており、しっかりモニタリングしていく」と言う。

 第一生命は、23年度までに全資産の運用方針・プロセスにESGの要素を組み込む方針を掲げる。同社が重点を置く社会課題の解決に向けた投資(テーマ型投資)を19年度(約5500億円)の2倍以上に増やす。21年8月末時点で既に約9400億円を投じた。

 21年度から、「自然資本の持続可能性向上」をESG投資の重点テーマに掲げており、今後、自然資本関連の投資を増やしていく。

■ ESG投資のテーマ別内訳
■ ESG投資のテーマ別内訳
■ ESG投資のテーマ別内訳
第一生命保険は5つのESG重要テーマを中心に、累計約9400億円を投資した。アングリアン水道会社は湿地を活用した水処理施設を整備する(右)
(出所:第一生命保険、写真:Anglian Water Services Financing PLC)

 第一生命保険運用企画部運用調査室マネジャーの黒田洋一郎氏は、「リスクの観点から生物多様性は非常に重要だ。生物多様性を考慮した案件に投資することで投資先企業の取り組みが高度化し、成長につながる」と言う。

 今後、気候変動に次ぐ重要課題として、生物多様性保全への取り組みで企業を評価し、投資先を選別する動きが広がりそうだ。