「石炭や、化石資源への補助金について段階的廃止を加速するように要請する」。11月10日未明、気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で公開された「COP26決定」の議長草案にこんな一文が盛り込まれた。石炭をはじめとする化石資源への締め付けを強める内容だ。

 加えて、「2022年末までに30年までの温室効果ガス削減目標を、再検討や強化することを要請する」ことも草案に盛り込まれた。パリ協定の「気温目標」に整合するレベルの温室効果ガス削減目標を求めるという。COP26の議長を務めるアロック・シャロマ議長は10日午後の会見で「科学と世界の市民が、高い野心(温室効果ガス削減の目標引き上げ)を示すことを求めているが、COP26決定文書の草案はバランスをとった内容だ」と話した。

 日本は21年4月、30年度までに温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減する目標を新たに示した。気温上昇を1.5℃に抑える水準とされるため、日本に目標強化の必要はないとみられ、米国や欧州連合(EU)、英国なども同様だ。一方で世界最大の温室効果ガス排出国である中国など、排出量の多い国に対し、目標強化を迫るものとみられる。

 「火力発電に頼らざるを得ない国は、途上国など多くある。果たしてこの議長案で合意できるのか」と、ある政府関係者は話す。また、経済産業省の在籍時にCOPでの交渉経験のある東京大学の有馬純教授は、「交渉のたたき台として盛り込まれた。12日の閉会までどうなるか慎重に見ていく必要がある」との見方を示す。

 またこの日夕方には、中国と米国がそれぞれ会見を行い、米中で「グラスゴー共同宣言」に合意したことを発表した。中国は22年に開催するCOP27 までに、メタンに関する行動計画を策定するという。

 クルマの脱炭素化についても、33カ国が宣言した。「40年にはゼロエミッション車のみを世界で販売する」。11月10日に開催された「運輸デー」では、CO2を排出しない「ゼロエミ」の乗用車(バンを含む)への移行を目指す。35年には世界の主要市場で販売される自動車を100%ゼロエミ車とし、40年には全世界で100%ゼロエミ車にする。
 宣言に署名したのは、英国、カナダ、スウェーデンなど先進国23カ国とトルコ、メキシコなど途上国10カ国の他、企業や投資家などで、日本やドイツ、米国の政府は署名していない。10日夕方にCOP26会場で開いた記者会見でボリス・ジョンソン首相は、「ここにいる我々が高い野心を示すことが最も重要だ」と話し、「我々は、英国で(化石資源など燃料として使う)炭化水素から完全に移行したい。それもできるだけ早く。ガソリンエンジン車から早いペースで移行する」と話した。

 「なぜトヨタ自動車や日産自動車は署名していないのだろうか」という記者の問いに対し、10日の会見に出席した国際イニシアチブ「We Mean Business」のナイジェル・トッピングCEOは「すべての国やすべての企業が登録しているわけではないが、今日、我々は重大なシステムの変化を目にしている」と話した。そして、「署名しなかった企業も、市場に逆らえず、30年代半ばにも、エンジン車の縮小に対応していく必要が生じるかもしれない」との見解を述べた。

英国はCOP26で2040年までに新車販売の100%をゼロエミ車にする宣言に署名した(写真:UNFCCC_COP26_1Nov21_WorldLeadersSummit_KiaraWorth-10)
英国はCOP26で2040年までに新車販売の100%をゼロエミ車にする宣言に署名した(写真:UNFCCC_COP26_1Nov21_WorldLeadersSummit_KiaraWorth-10)

 宣言に署名したのは他に、ニューヨークやカリフォルニア、ワシントンなど39の州・都市、米フォード・モーター、米ゼネラル・モーターズ、独メルセデス・ベンツ、英ジャガー・ランドローバーなど11の自動車メーカー、スイスABB、英アストラゼネカ、英グラクソ・スミスクライン、デンマークのノボノルディスク、独シーメンスなど27社の企業、自動車株を保有する13の投資家、13の機関投資家などがある。

 宣言によれば、自動車メーカーは、35年以前に主要市場で100%ゼロエミッションの新車とバンの販売を達成するために努力し、事業戦略を整えることが求められる。
 自動車メーカーの株式を保有する投資家に対しては、ゼロエミ車への移行を加速するようサポートを求めている。投資先のメーカーに「科学に基づく削減目標(SBT)」に沿って自動車の脱炭素化を奨励する必要がある。

 その他の機関投資家や金融機関も同様に、35年までに主要市場における100%ゼロエミ車販売を達成するため、メーカーや消費者を支援することが求められる。