COP26本会議場での議論は大詰めを迎えた(写真:UNFCCC_COP26_11Nov21_HighLevelGlobalAction_KiaraWorth-2)
COP26本会議場での議論は大詰めを迎えた(写真:UNFCCC_COP26_11Nov21_HighLevelGlobalAction_KiaraWorth-2)

 「議長国・英国は11月12日中に交渉の合意を目指す方針。今から延びると見込んではいけない」。前夜、会期の延長の可能性を問われた日本政府交渉団の1人はそう答えた。

 気候変動枠組み条約締約国会議(COP)は今回で26回目となるが、最終日も合意に至らず1日や2日延期することが通例となっている。毎年、COPの取材に参加するベテランジャーナリストは「今回は交渉のテンポが違う。本当に期日に終わるのではないか」「何度も合意文書の草案を書き直すことで、先進国や途上国の不満を上手にガス抜きしている」と期待する。一方、交渉を熟知する環境NGOの参加者は「12日中に終わるとはとてもではないが思えない。土産を買いに行くなら12日。13日は交渉の合意を見届けた方がいい」と指摘する。

「ゾンビクレジット」生かすか

 COP26の閉会が期日翌日にもつれ込む原因となりそうなのが、パリ協定の6条「市場メカニズム」に関する交渉である。6条交渉では、他国での温室効果ガス削減量を「クレジット」などの形で購入し、自国の削減目標の達成に使うルールを議論する。日本は独自の二国間クレジット制度(JCM)を生かすため、交渉の成功を目指す。

 6条では、3つの争点がある。1つ目は、京都議定書のクレジットを利用できるようにするかだ。ブラジルやインド、そして中国がこの実現を要求している。京都議定書で削減義務を負った先進国が大量に購入することを想定して、大規模にクレジットを発行したこの3国は、2004年以降、12年頃までに実施された削減実績を基にするクレジットを売却して利益を得ようとしている。ただ、10年や20年近く前の削減実績を今、活用するようでは、「1.5℃目標」は当然ながら、実質的な温室効果ガスの削減につながらない。そのため、ほとんどの国が反対している。

 京都議定書のクレジットは「ゾンビクレジット」と揶揄される。ある日本の交渉官はCOP26会期前、「米国をはじめ先進国はゾンビを徹底的に始末する方針」と話した。

 2つ目の争点は、クレジット売却国が削減量を取り消す「相当調整」だ。購入国と売却国とで削減量をダブルカウントするのを避けるのに必要になる。だがこれも、自国の温室効果ガス削減目標を達成したいブラジルやインドが、取り消しに反対している。

 そして3つ目の争点が、クレジットの売却益の一部を国連に集約して、顕在化する気候変動の影響に脆弱な途上国の適応支援などに使う「収益金の分配(SOP)」である。これは京都議定書の時代から導入されていた仕組みだ。パリ協定でも、国連が管理するクレジットの場合はSOPを適用する条項が盛り込まれた。問題は途上国が、日本が構築した独自のJCM制度などにも、SOPの導入を求めていることだ。

 JCMは、日本がアジアを中心とする途上国と2国間で合意のうえで協力し、温室効果ガス削減事業に取り組む仕組みだ。事業に取り組んだ2つの国以外の国に、その果実を何らかの形で流すことは筋違いと言える。そのため米国や日本などはこの要求に反対している。

 一方で、途上国にとっては自国に資金が流れるルートを増やせることから、導入を求めている。英国入りした日本の山口壯環境大臣は、中国やブラジルの閣僚と既にバイ会談を実施。12日にはインドの閣僚ともバイ会談で直接対話し、交渉の軟着陸を目指すとみられる。