花王はインドネシアで小規模パーム農園の支援を開始する。森林破壊や児童労働の温床に切り込み、原料の安定調達を確保する。

衣料用洗剤や全身洗浄剤など多くの製品にパーム油が使われている(写真:花王)

 「花王はインドネシアとマレーシアで生産しているパーム核油の7~8%を使用している。責任ある調達の一環として、ここのサプライチェーンでの環境問題や人権問題にしっかり対応していく」。2020年10月、花王購買部門統括の根来昌一常務執行役員は記者説明会でこう話した。

 同社は、インドネシアのパーム油販売会社アピカルグループと農園会社アジアンアグリと共同で、小規模パーム農園の生産性向上や「RSPO認証」の取得を支援するプログラムを開始する。

 洗剤や加工食品などに使われるパーム油は世界で最も消費量が多い植物油で、原料のアブラヤシは主にインドネシアとマレーシアで生産されている。ただ、現地では森林破壊や児童労働などが問題になっている。

生産性の向上が鍵

 花王はこれまで、RSPO認証油の購入や調達先の監査などを実施して問題の解決に取り組んできた。だが、問題の根は小規模パーム農園にあるとみて支援を決めた。

 WWFジャパン自然保護室森林グループの南明紀子氏は、「数百万件あるとされる小規模農園は栽培の知識がなく収率が上がらないため、収量を増やそうとして開墾する状況になっている」と指摘する。

 花王は新規農園の開発を抑えるため、小規模パーム農園に対して農園の管理方法や技術を指導していく。生産性向上のため自社開発した展着剤を提供する他、作業場の安全確保に向けてヘルメットや手袋を支給し、消火器も設置する。2020年から30年までの間に約5000件の小規模農園を支援する計画だ。

インドネシアの小規模パーム農園。花王は約10年かけて約5000件を支援する
(写真:花王)

 「小規模パーム農園の収率を上げ、RSPO認証を取得するところまで支援していくことが本質的な問題の解決になる。森林破壊を防ぎ、貧困や児童労働の問題から脱却させていけるのではないか」(花王の根来常務)

 持続可能な調達を実現する上で認証製品を購入・使用するのは1つの手段だが、それだけでは解決できない問題はある。RSPO認証を取得している生産者が人権侵害や違法伐採を犯す事案も起きている。「認証制度はツールにすぎない。企業としてどういうことをしたいか調達方針を明確にすることが大切だ」(WWFジャパンの南氏)。

 ESGに取り組む企業が増える中、問題の本質を捉えて解決に当たることが他社との差別化につながり、評価を高めるポイントになりそうだ。