サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現へ企業が本腰を入れ始めた。商品の付加価値を高め、環境負荷低減と事業成長の両立を狙う。

 P&Gジャパンは2021年9月から10月にかけて、ヘアケアブランドの「パンテーン」から2つの新商品を発売した。1つは、リサイクルがしやすい単一素材でできた「詰め替えエコパウチ」。もう1つは、耐久性に優れ、リユース(再使用)に適した「アルミボトル」である。

P&Gジャパンが発売した「詰め替えエコパウチ」(左の2点)と「アルミボトル」(右の2点)<br><span class="fontSizeS">(写真:P&G ジャパン)</span>
P&Gジャパンが発売した「詰め替えエコパウチ」(左の2点)と「アルミボトル」(右の2点)
(写真:P&G ジャパン)

10年越しで商品化

 シャンプーや洗剤などの詰め替え用商品のフィルム容器は、複数の種類のプラスチックを何層も重ねたり、アルミを付着させたりしてつくられているものが主流になっている。中身の品質保持や耐久性などに優れる半面、素材別に分けるのが難しいため、使い終わった容器は焼却処理されているのが実情だ。

 単一のプラスチックでつくったフィルム容器は、ユニリーバ・ジャパンがサシェと呼ぶお試し用の小さい商品に採用している。詰め替えエコパウチは、サイズが大きい通常の商品に採用しており、世界でも類を見ない。P&Gヘアケア研究開発本部ディレクターの森田竜平氏は、「プラスチックのグレードや厚さ、重ねる順番、容器の形状など、10年間試行錯誤した」と話す。

 一方のアルミボトルは、従来のプラスチックボトルに比べて劣化しにくく、本体容器として長く使ってもらいやすい。プラスチックの使用量を大幅に削減できるだけでなく、リユースする期間が長くなることで廃棄されるプラスチックも減る。

 プラスチックボトルの商品に比べて価格は割高になるが、「21年1月に販売開始した欧州では高級感のあるデザインが受け入れられており、売り上げは予想を上回る」(P&Gジャパンヘアケア担当の田中康之執行役員)と言う。

 海洋プラスチック問題への関心の高まりを背景に、企業は使い捨ての容器などプラスチックごみの削減を強化している。特に日用品メーカーは、プラスチック使用量が少ない容器の開発や使用済み容器の回収・リサイクルを急ピッチで進めている。他社に後れを取れば、環境や社会課題に配慮していない企業と見られ、顧客が離れる恐れがある。

 「多くの消費者が環境に配慮した商品を好むようになっており、サステナビリティがブランドにとって欠かせなくなっている。小売業も(使用済み容器の)回収プログラムに取り組むようになっており、環境に配慮した商品をより多く取り扱うところが増えている」(田中執行役員)

競合他社と協業し、使用済み容器を回収する。写真はイオンスタイル幕張新都心にある「グラムビューティーク」の売り場<span class="fontSizeS">(写真:イオン)</span>
競合他社と協業し、使用済み容器を回収する。写真はイオンスタイル幕張新都心にある「グラムビューティーク」の売り場(写真:イオン)

 ブランドの強化には、使用済み容器を分別・回収し、リサイクルしているところを消費者に見せていくことも大切だ。P&Gは21年6月から、資生堂やコーセーなどと共に、イオングループの店舗で使用済み容器を回収している。今後はこうした場を活用して、回収をさらに強化する考えである。

 企業同士の共同回収・リサイクルが広がるなか、10月に神戸市で大規模な取り組みが始まった。生活協同組合コープこうべやダイエー、花王、P&Gジャパン、大栄環境など、小売業、メーカー、リサイクル事業者の16社が参加する。市内75カ所で詰め替え用商品の使用済み容器を回収し、再び新品の容器に戻す「水平リサイクル」に取り組む。

 初年度はまず使用済み容器を5t回収するのが目標だ。実証プラントを使ってリサイクルの品質やコストなどを検証し、23年にも回収した容器をリサイクルした商品を市内の店舗で販売したい考えだ。叡啓大学特任教授の石川雅紀氏は、「参加企業からすれば利益が出て、持続的に回していけるモデルをつくることが最大のチャレンジになる」と言う。