企業に独自の温室効果ガス削減目標の設定を求めるSBTイニシアチブ。金融・投資家向けと「実質ゼロ」目標に関する最新の検討状況を公表した。

 企業に対する要請がさらに強まりそうだ。温室効果ガス削減目標の自発的な設定を企業に求める「SBTイニシアチブ」が、新方針を発表した。

 SBTは「科学に基づく温室効果ガス削減目標」のことだ。パリ協定は世界の平均気温の上昇を「2℃を十分に下回る」か、1.5℃に近づける努力を求めている。この実現に貢献するため、SBTイニシアチブは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」などの知見に基づき、合理的な削減目標の設定方法を策定している。

 2020年11月24日時点で、世界の大手製造業など1062社がSBTを自発的に設定する意思を表明し、517社がSBTを設定してイニシアチブの認定を受けた。このうち138社は気温上昇を2℃を大きく下回る(1.75℃)程度に抑えるのに貢献する削減目標を示し、237社が同1.5℃に相当する削減目標を示した。

投融資先の削減目標を要請

SBTイニシアチブが2020年10月に発表した「金融版SBTガイダンス パイロット版」(写真:SBTイニシアチブ)
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 SBTイニシアチブは18年から、金融業界のSBTを検討している。これまでに金融業界が設定する削減目標をSBTとして認定する基準案が発表されている。現在の案は、銀行やアセットオーナー、運用機関、不動産投資信託(REIT)が対象だ。

 注目すべきは、投融資の対象となる企業やプロジェクト、不動産などからのCO2排出について目標設定を求めることだ。金融機関のバリューチェーンからの排出のうち社用車の走行などによる直接排出(スコープ1)と、購入電力の消費による間接排出(スコープ2)の削減目標は、2℃を十分に下回る程度に抑える水準(毎年2.5%)の削減が必要で、可能なら1.5℃(毎年4.2%)を推奨する。

 投融資からの排出(スコープ3カテゴリー15)については、削減目標を設定する3つの方法を挙げた。その1つ、「業界別脱炭素アプローチ(SDA)」は、投融資対象の業界別に目標の設定方法を示している。例えば発電事業に対するプロジェクトファイナンスは、発電量当たりのCO2排出量を1.75℃や1.5℃の水準まで削減する目標の設定を求める。

 株式・債券投資や、融資を行っている企業からの排出も、可能ならばSDAで目標を設定する。例えば製鉄や化学、化石資源、運輸などの業種の株式を保有するなら、発行した企業の排出削減が必要になる。

 他の目標設定方法として、投融資先企業のうちSBT認定を取得済みの割合を高める「SBTカバー率目標」や、NGOのCDPとWWFが開発した「気温上昇スコア」も使える。後者は企業の目標が、気温上昇をどの程度、抑えられるかを評価したものだ。

■ 金融版SBTが提案する投融資の目標設定
SBTイニシアチブは上に示した例のほかにも目標設定方法を適用する条件や、業界ごと・投融資対象ごとの解説を示している。「1.75℃」は「2℃を十分下回る」水準のこと
(出所:みずほ情報総研による解説を編集部で抜粋」)
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