金融機関はプロジェクト事業者や株式・債券の発行企業、融資先企業に、まずはエンゲージメントで目標設定や対策を求める。これができない場合、株式売却をはじめ投融資ポートフォリオの調整が必要になる。

 他に金融機関に対して推奨される取り組みとして、石炭への投融資を段階的に廃止し、30年までに完全撤退する方針をSBT認定の取得後6カ月以内に策定することを求めた。みずほ情報総研の氣仙佳奈コンサルタントによれば「石炭の採掘や探査、掘削、取引、輸送をはじめ、石炭を使う機器の製造やエンジニアリングまでを含む幅広い事業分野で収益の5%を超える企業が対象になる。石炭火力発電のタービンや、石炭採掘の重機を製造する事業も検討の対象になる可能性がある」と見る。

 この認定基準案を基に、希望する金融機関がSBT認定取得のパイロット審査を受ける。審査を踏まえ、21年4月には認定基準などを改訂する予定だという。

「削減貢献」は過渡的な選択肢

SBTイニシアチブが2020年9月に発表した「SBTネットゼロ目標 基礎的考え方」(写真:SBTイニシアチブ)
[クリックすると拡大した画像が開きます]

 SBTイニシアチブは20年9月にも、別の新方針を発表した。実質ゼロ目標を掲げる場合、どのような対策を採用すべきか、見解をまとめた。

 SBTは5~15年先が目標年だが、50年を目標年として実質ゼロを自発的に目指す企業が増えた。みずほ情報総研の森史也コンサルタントは「今は実質ゼロ目標の達成手段について国際的に統一された考え方がないのが実情。SBTが開発する実質ゼロ目標の新たな基準が世界の標準となることも考えられる」と指摘する。SBTイニシアチブは21年11月にも目標設定方法を固める。

 議論を呼びそうなのが、技術革新を尽くしても脱炭素できない分野の排出をどう対処すべきか。SBTは「ニュートラル化」を求めた。具体的な手法は今後、検討されるが、植林による吸収や、土壌に炭素をため込ませる「土壌炭素隔離」、化学プラントなどでCO2を回収する「大気直接回収」などで大気中のCO2を「除去」する取り組みが該当しそうだ。

 一方、日本が産官で推進し、効果を国際的にアピールする「削減貢献」は、排出削減と見なされないもよう。企業は省エネ製品を売ることで顧客によるCO2排出の削減に貢献する。この貢献を、削減できない自社の排出を相殺するのに使う考え方だ。「削減貢献では大気からの直接的なCO2削減と見なされない。SBTは脱炭素化を目指す移行期に用いる過渡的な選択肢に位置づけ、削減量としては加味されない方針」(森コンサルタント)。

■ SBTの「実質ゼロ」目標の要件
2020年末に「ネットゼロ」の認定基準の草案、21年3月に最終版の公表、21年11月にはガイダンス最終版が発表される見通し」
(出所:みずほ情報総研による解説を編集部で抜粋)

 新たに示されたSBTの2つの方針は、日本企業の気候変動対策に見直しを迫ることになりそうだ。