日本で漁獲される約3700種の魚のうち、これまでTACを定めてきたのはサンマやサバなど8種だけ。この8種で日本の全漁獲量の6割を占める。今後は対象種を全漁獲量の8割に引き上げる。IQでの資源管理に移れば、船ごとの漁獲上限が決まるため、早取り競争が起きず乱獲を防げる。水産業のデジタル・トランスフォーメーションも推進する。漁獲データや海況情報が収集しやすくなり、資源管理が円滑になる。

 水産改革で他に議論されている点は、魚1匹ごとに漁獲番号を付ける制度の導入だ。IUU(違法・無報告・無規制)漁業による魚ではないことを証明するため、漁獲物ごとに13桁の漁獲番号を付け、どこでいつ取れた魚か追跡できるようにする。違法漁業の恐れが高いナマコやアワビなどの魚種から導入される予定だ。

マグロで世界初のMSC認証

 この動きを先取りする日本企業も現れた。宮城県気仙沼市の臼福本店は20年8月、タイセイヨウクロマグロの漁業で世界初のMSC漁業認証を取得した。クロマグロを資源管理しながら適切に取ってきた同社は、認証取得によってIUUに関与していないことを証明したいと考えた。

 さらに同社は、すべてのクロマグロに通し番号入りの電子タグを付け、履歴を追えるようにしている。「来歴が分かる魚を提供することで、漁業資源のサステナビリティに貢献し、履歴が不透明なマグロと差別化できる」と臼井壯太朗社長は話す。MSC認証のクロマグロの売り上げは2年後に約2億円を見込む。

臼福本店は世界で初めて、タイセイヨウクロマグロでMSC漁業認証を取得した。マグロ1匹ごとに来歴を示す電子タグも付けて出荷している
(写真:臼福本店)
フレンチレストラン「シンシアブルー」のメニュー。サステナブル認証魚や未利用魚が並ぶ
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 消費市場に影響を与えるインフルエンサーも現れた。ミシュラン一つ星のフレンチレストラン「シンシア」のオーナーシェフ、石井真介氏だ。20年9月、サステナブル・シーフードを主な食材にする店「シンシアブルー」を東京・原宿に開いた。メニューには宮城県産のASC(水産養殖管理協議会)認証のギンザケや千葉県産のFIPのスズキなどに加え、神奈川県の未利用魚オアカムロが並ぶ。未利用魚の活用も、資源を守るサステナブルな活動だ。石井氏は「この店が消費者を引っ張り、他の店をけん引する道しるべになれば」と話す。21年にはシンシアブルーの年商を1億円にしたい考えだ。

 日本の水産現場に開いた風穴。サステナブル・シーフードをてこに、水産大国の復権が待たれている。