大型船はアンモニアが主流に

 国際エネルギー機関(IEA)によれば、国際海運から排出されるCO2は年間約7億tで、世界の総排出量の約2%を占める。現在、船舶燃料はほぼ100%石油燃料(重油)で、代替燃料への転換が急務だ。IEAの50年カーボンニュートラルに向けたシナリオでは、30年に約2割、50年に8割以上が代替燃料に置き換わる必要があり、中でもアンモニアは50年に46%と半分近くを占めると予想している(下の図)。

■ アンモニアの燃料シェアは50年に約5割に
■ アンモニアの燃料シェアは50年に約5割に
IEAの50年カーボンニュートラルに向けたシナリオでは、船舶燃料は8割以上が重油から代替燃料に置き換わり、アンモニアは46%と半分近くを占めると予想されている
(出所:IEA「Net Zero by 2050」)

 アンモニアは水素キャリアとして、既に船舶による輸送と貯蔵の技術が確立している。これが次世代の船舶燃料として有望視される大きな理由だ。IEAは、水素由来の3つの燃料について50年の普及率を産業セクター別に予測しているが、船舶輸送は他のセクターに比べてアンモニアの比率が圧倒的に高くなっている(下の図)。

■ 船舶輸送はアンモニアの燃料比率が高い
■ 船舶輸送はアンモニアの燃料比率が高い
水素、合成燃料(水素とCO2からつくるメタノールなど)、アンモニアの3つについて、産業セクター別に50年の総エネルギー需要に対する比率を予測。船舶輸送は他セクターに比べてアンモニアの比率が特に高い
(出所:IEA「Net Zero by 2050」)

 脱炭素化をリードすることで、国際海運における日本の勢力を巻き返すことが、日本の海事クラスター(関連企業群)の一致した目標だ。その達成に向け、国際海運の温室効果ガス削減目標や対策の枠組みづくりを決める国際海事機関(IMO)の議論にも積極的に関与している。

 21年11月に開催されたIMOの海洋環境保護委員会において、日本は米国や英国、ノルウェーなどと共同で「50年カーボンニュートラル」を新たな目標として掲げることを提案した。対策としてゼロエミッション船の研究開発を支援する国際海事研究開発基金(IMRF)の創設や、排出量取引制度などの検討も始まった。こうした場で日本の脱炭素戦略は先進的と評価されているのだろうか。

LNG船の橋渡しは必要か

 三井住友DSアセットマネジメント運用業務部投資情報グループの渡辺英茂ヘッドの見立てはこうだ。

 「日本の海運大手の計画はどれもゼロエミッション船の導入開始時期が20年代後半で、当面は液化天然ガス(LNG)を燃料とする船を導入して低炭素化を図るとしている。これが世界の移行シナリオに沿っているかを今後注視していく必要がある」

 というのも、コンテナ業界世界最大手・デンマークのマースクが、カーボンニュートラルを実現できるメタノール燃料船を23年から運航開始し、LNG燃料船には原則投資しない方針を打ち出したからだ。世界銀行はこのマースクの方針を支持するとともに、LNG燃料による海運の温室効果ガス削減効果は限定的とするリポートを公表。LNGを経てアンモニアや水素などのゼロカーボン燃料に転換した場合、LNGを経ずに転換した場合よりも投資負担が10~17%増えるとの試算を示した。

 投資家の関心が一気にゼロエミッション船に向かえば、LNG船を経由する日本の戦略は見直しを迫られることになる。IMOの対策ルールの議論に関与するとともに、移行シナリオの方向性を見極めながらロードマップを描く必要がある。