IFRS財団が気候変動に関する情報開示基準の原案を公表した。TCFDよりも細かい指標が並び、企業の負担が増すのは必至の情勢だ。

 IFRS(国際財務報告基準)財団は2021年11月、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を発表した。ISSBは、気候変動をはじめとするサステナビリティに関する情報開示の基準を策定する。

 非財務情報の開示を巡っては、これまで様々な団体が策定した基準が乱立しており、企業や投資家の間で混乱が生じていた。国際会計基準の策定を担うIFRS財団が非財務情報の基準づくりに乗り出すことで混乱の解消が期待される。実際、ISSBは22年6月に、主要な基準策定団体である国際統合報告評議会(IIRC)とサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が合併した価値報告財団(VRF)、気候変動開示基準委員会(CDSB)と統合する。

■ 主要な基準策定団体を統合して新基準を開発
■ 主要な基準策定団体を統合して新基準を開発
IFRS:国際財務報告基準 ISSB:国際サステナビリティ基準審議会 VRF:価値報告財団 IIRC:国際統合報告評議会 SASB:サステナビリティ会計基準審議会 CDSB:気候変動開示基準委員会

 KPMGジャパンサステナブルバリューオフィスパートナーの芝坂佳子氏は、「今後、もっといろんなところとアライアンスを組むことになるだろう」と言う。バラバラだった基準は収れんしていくとみられる。

SASBの指標を採用

 その一方で、ISSBの設立と同時に公表された基準のプロトタイプ(原案)に企業が警戒を強めている。第1弾となる気候変動に関する基準は、業種ごとに細かく指標が示されているからだ。それもそのはずで、これらの指標はSASBのものを採用している。例えば、日用品はパーム油の調達に占める認証油の比率、自動車はゼロエミッション車の販売台数といった指標がある。

 気候変動に関する情報開示については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への対応を監督当局や投資家が企業に要請するようになっている。例えば、22年4月の東京証券取引所の市場再編では、最上位のプライムに上場する企業に対してTCFDと同等の枠組みに沿った情報開示を求める。

 TCFDへの対応に苦慮する企業が少なくない中、今後はそれを超えるさらに詳細な情報開示を求められる可能性がある。BNPパリバ証券チーフESGストラテジストの中空麻奈氏は、「同じフォーマットで情報開示が進み、ESG投資の基準として使いやすいものになる一方、企業の負担は増える」と指摘する。

 既に動いている企業もある。ダイキン工業は、「IFRS財団が開示を強化しようとしている内容について大半は対応できる。一部、グローバルで情報を把握しないといけないものもあるが開示できるよう準備している」(十河政則社長)と言う。

 ESG投資が拡大し、非財務情報の開示が企業の評価に大きく影響するようになっている。基準づくりの動向を注視しつつ、社内外の情報を収集する体制を整える必要がある。