ガバナンス改革の遅れやエンゲージメントの余地に注目する。中・小型株のESGに焦点を当てる資産運用会社も出てきた。

 海外投資家が再び日本企業に狙いを定めている。ターゲットは、ガバナンス改革が遅れている企業だ。企業がガバナンス改革に動こうとしない状況を逆手に取り、運用リターンの獲得を狙う。

 スイスの資産運用会社ユニオン・バンケール・プリべ(UBP)は、2020年7月から日本株式の本格運用に乗り出した。運用額は約80億円である。日本法人社長の吉原和仁氏は、「日本企業のガバナンス改革は、積極的に取り組む企業と、全く取り組まない企業の二極化が進んでいる」と話す。ここに目を付けた。

ガバナンスで企業を二分

 UBPが実践するのが、「マーケットニュートラル」と呼ばれる運用戦略だ。独自のガバナンス基準で企業をふるいにかける。構築するポートフォリオは、ガバナンスが良くて成長が見込まれる25~35銘柄と、ガバナンスが悪く衰退を予想する50~70銘柄だ。ガバナンスの良い企業の株式を持ち、株価が上がった時点で売却して利益を得る。同時に、ガバナンスの悪い企業に対しては株式を借りて売り、株価が下落した時点で買い戻す「空売り」で利益を稼ぐ。買いと売りの株式を常に同額保持し、これを13業種で運用する。

 狙いは、リターンを維持しつつリスク(株価の変動幅)を抑えることだ。新型コロナウイルス感染症など市場全体に影響を及ぼす出来事が起こったとき、ガバナンス優良企業は変化への対応力を発揮して株価は次第に上昇する。一方、ガバナンスが悪い企業は、変化に追随できずに株価は下がる。この対の動きが変動を相殺して変動幅を抑える。

 菅義偉総理の就任や米国大統領選挙など、大きな出来事があった20年7~11月のTOPIX500の変動率が17.7%だったのに対して、同ファンドは常に3~5%を維持しているという(下の図)。同社シニアファンド マネージャーのズヘール カーン氏は、「ガバナンス改革に取り組まない企業には積極的に空売りを仕掛ける。こうすることで、日本市場全体のガバナンスの底上げを図る」と話す。

■ ガバナンスが良い企業と悪い企業を組み合わせて運用する
■ ガバナンスが良い企業と悪い企業を組み合わせて運用する
スイスのユニオン・バンケール・プリべ(UBP)の運用パフォーマンス。ガバナンスの良い企業と悪い企業を組み合わせることで、リターンを維持しながらリスクを抑える。リターンとリスクは年率。 2019年4月26日~20年10月23日の結果。運用開始は20年月7月14日で、これ以前は運用開始時と同じポートフォリオで算出
(出所:ユニオン・バンケール・プリべ)