PRIの提言は、コード改訂や市場改革の論点となりそうだ。今後、海外投資家の声を踏まえた議論が求められる。

 世界のESG投資を牽引するPRI(国連責任投資原則)は2020年10月、「日本の持続可能な金融政策に関する報告」と題した提言書を公表した。提言書の内容は、大きく2つに分かれている。前半は、日本のESG投資に関する政策決定の主体や取り組み内容の紹介だ。後半が、日本政府や運用機関、企業への提言となっている(下の図)。

■ PRIの日本に対する提言
■ PRIの日本に対する提言
PRIの提言から主な内容を抜粋。海外投資家から見た日本のESG投資に関する論点が列挙されている。PRIは、Principles for Responsible Investmentの略
(出所:PRI)

 提言では、日本政府に対して政策や法制度の整備などを訴えている。各省庁によるESG投資の推進を評価しながらも、それらを包含する国家戦略の必要性を指摘している。企業に対しては、ESG情報開示や気候変動対策の拡充を求めている。「コンプライ・オア・エクスプレイン」を中核に据える日本の指針は自由度が高い半面、実効性に疑問が残る。投資家にとって企業を比較しずらい面もあり、必須開示のESG情報を定めるべきとしている。

 20年11月時点の世界のPRI署名機関数は3470機関である。日本は、21年にコーポレートガバナンス・コードの改訂、22年に市場再編を控えており、海外投資家は日本のESG投資の高まりを注視している。PRIの提言は、日本で今後進められるこれらの議論の論点となりそうだ。

薄い日本市場の存在感

 日本のESG投資はどうなっているんだ─。今回、PRIが提言をまとめた背景には、見えにくい日本市場に対する海外投資家の不満の高まりがあった。PRIには「ポリシーリサーチチーム」と呼ばれるESG政策の分析・提言チームがある。そのチームにはこれまで、米国やEU、中国といった主要市場の担当者はいたが、日本の担当者がいなかった。

 そこで20年夏から日本取引所グループの鳥居夏帆氏がポリシーリサーチチームに加わり、提言をまとめた。鳥居氏は、「海外投資家にとって日本市場のESG投資に関する議論の中身は見えにくい。日本市場の存在感を高めるためにも、国際的な議論に参加する必要がある」と話す。

 21年9月には、PRIの年次総会が日本で開催される予定だ。日本への注目度は高まる。海外投資家の声を踏まえた議論が求められている。