IT決済ソリューションという独自のサービスを世界で展開。内部昇進した女性CEOが社員の多様性を追求する。

 旅行会社や商社では国境を越えて様々な相手と取引をする。決済や送金では銀行振り込みや通貨の両替などの業務が発生して手間がかかる。

 そこに解決策を提供するのが米ウェクスである。1983年の創業で米メイン州に本社を構え、今は約5000人の従業員を抱える。決済を助ける「バーチャルカード」が主力サービスで、これを使うと国境や通貨を越えて、ホテルや航空会社、利用者などが支払いを決済できる。1枚のクレジットカードを共有するイメージで、それぞれが暗証番号を入力して代金を支払ったり、受け取ったりできる。顧客にとっては支払いや受け取りの手間や時間が省けるため、利便性が高い。

 すでに年間で扱う決済は5億回を数え、扱う通貨は21種類に及ぶ。2020年1-9月期の売上高は11億6000万ドル(約1210億円)、営業利益は1億50万ドル(約110億円)に達する。

 一般に高い知名度を誇っている会社ではないが、ウェクスはESG投資家が注目する、知る人ぞ知る会社。理由は、IT決済サービスの先駆けである点に加えて、内部昇格した女性CEO(最高経営責任者)をはじめ女性幹部が多いことにもある。

 執行役員10人のうち4人が女性。特に会長兼CEOのメリサ・スミス氏は同社に1997年、金融アナリストとして入社し、CFO(最高財務責任者)を経て、2014年にCEOへと昇進した。CFO時代の05年には同社を株式公開に導き知名度を高め、CEOに就いた14年から19年の5年間では1株当たり利益を約2倍(19年は9.2ドル=約960円)に高めて、敏腕の経営者として知られる。

 そのスミスCEOが力を入れるのが、社内の多様性である。社員の中途採用においても、ベンチャー企業と大企業の出身者をバランス良く採用し、人種や国籍の多様性も重視して、今や社員の半数は米国以外の国籍が占める。スミスCEOには「多様性を保つことで様々な意見が出て、それがビジネスの創造性につながる」との経営理念がある。

2019年3月、メイン州ポートランドの新本社の開設式で。左から3人目が会長兼CEOのメリサ・スミス氏(撮影: Portland Press Herald)

社員対話へグループ活動

 日常的にそれを実践するために様々な従業員のグループを結成して、対話を促す。すでに女性チームやLGBT関連のグループ、若手社員グループなどがある。それぞれのチームは社内サイトにブログを持ち、活動内容を社内外に発信している。

 スミスCEOの内部昇進が示すように長期勤務の社員が多いのも特徴。内部昇進のための幹部研修にも力を入れる。2日間、3日間、5日間と様々なタイプの研修を実施して、コミュニケーションのあり方や会議の進め方、リーダーのあり方など仕事に直結する科目を学ぶ。そうした体験を通して、新事業のアイデアを増やしていくことが狙いにある。

 多様性は事業展開にも及ぶ。過去2年間だけでもウェクスはカード会社や情報分析会社など6社を買収した。こうして決済機能だけではなく、様々な顧客の動向を見極めるデータ分析会社へと転換を図る。普段は名前が出ることが少ない会社だが、国際的な決済インフラ企業として足場を固めている。